第32話
キスすらしていない関係だけれど、騙されていたと思うと怒りが湧いてくる。
その時、教室内にマリナと弘志君が戻ってきた。
ちょっと泣いたようで、マリナの目は赤くなっている。
でも、そんなの自業自得だ。
マリナがやったことを考えると、こんなもんじゃ済まされないと感じてしまう。
マリナと貴也は今までよりもっと不幸になるべきだ。
あたしはそう考え、机の下でグッと拳を握り締めたのだった。
☆☆☆
「ねぇ、ちょっといい?」
放課後、クラスメートたちが少なくなった教室の中、あたしは弘志君へ声をかけた。
女好きの遊び人。
だけど顔もスタイルも悪くない。
一緒に並んで歩けるだけで女子なら優越感に浸ることができるだろう。
「俺?」
弘志君は怪訝な顔をこちらへ向ける。
「そう。これから時間ない?」
「あるけど?」
あたしは弘志君の手首をつかみ、教室を出たのだった。
☆☆☆
2人でやってきたのは近くの神社だった。
小さな神社で、在住する神主もおらず、平日の昼間に人気はない。
「マリナのこと、どう思う?」
「どうって……」
弘志君は空を見上げて思案する。
「好きだから付き合ってたんだよね?」
「いや。顔がいいから」
ストレートな返事にあたしは笑った。
弘志君らしい返答だった。
「マリナ、最近イジメられてるけど、助けないの?」
「めんどくせぇ」
そうだと思った。
「その割に、今日は怒ってたんじゃない?」
「あぁ? 貴也のことか?」
あたしは頷いた。
「一応な」
「自分は浮気するのに?」
「うるせぇ。話ってなんだよ」
そろそろイラついてきたようで乱暴な口調になってきた。
あたしはまっすぐ弘志君の前に立つと、ブラウスのリボンを外した。
それを見て弘志君は目を見張る。
「弘志君はマリナに浮気されたんだよ。それなら、やり返してもいいじゃない?」
「誘ってんのか?」
弘志君の手があたしのブラウスのボタンにかかる。
あたしは軽く身震いをした。
好きでもない相手とこんなことをするなんて思ってもいなかった。
でも、これも復讐の内だ。
マリナから弘志君も貴也も完全に奪い取ってやるのだ。
「こんなことしても、マリナが傷つくかどうかわからねぇぞ?」
「それでもいい。全部奪えるなら」
あたしはそう言い、弘志君に身をゆだねたのだった。
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