第31話
今日は散々な1日だった。
疲れ果ててベッドで横になる。
マリナがイジメられているとき、少しでも可哀そうだと感じた自分がバカバカしく感じられる。
あのゲームももう終りだ。
そう思いスマホを取り出す。
するとちょうどそのタイミングで藍からメッセージが送られてきた。
《ご指定いただきましたキャラクターは削除されました》
冷たい文章に眉を寄せる。
ゲームを起動して確認してみると、藍のキャラクターがなくなっていたのだ。
「なんで!?」
一瞬焦るが、すぐに気持ちを落ち着かせた。
きっと貴也が自分の恋愛体験を削除したのだろう。
なにせあたしにすべてがバレてしまったのだ。
この先ゲームを続けさせるわけにはいかないのは当然だった。
「ふんっ」
あたしは軽く鼻を鳴らして、ゲームをアンインストールしたのだった。
☆☆☆
友達が変わって彼氏がいなくなっても、あたしの生活は対して変化しなかった。
どちらかと言えば中学時代に戻ったような感じだ。
マリナからの自慢話しが、当たり障りのない話題に代わっただけだ。
「昨日のドラマ見た? 面白かったよねぇ」
安藤さんはいつもニコニコしていて、話していて気持ちがいい。
最近では安藤さんと同じグループの2人ともよく会話するようになった。
お弁当も今では4人で食べている。
貴也はあの日以来自分からあたしに話かけることはなくなっていた。
一体、どうしてあたしのことが好きになったのか、今でもよくわからない。
弘志君は相変わらずだし、マリナはまだイジメられている。
でも、それももうあたしには関係ない。
すべて過去の出来事だと割り切っていた。
「なんでお前のスマホにこんなもんが入ってんだよ!」
女子生徒3人組がマリナのスマホを奪い取り、怒鳴り散らしている。
「返して!」
マリナはいつになく必死で手を伸ばす。
しかし、スマホは右から左へ、左から右へと投げられてマリナの手には届かない。
「貴也とのツーショットじゃん!」
マリナのスマホを偶然キャッチした男子生徒が叫ぶ。
その名前に一瞬自分の胸が痛むのを感じた。
2人は付き合っていたのだから、その写真が残っていても不思議じゃなかった。
わかっていたことなのに、どうしても表情が硬くなってしまう。
「弘志、お前マジでふたまた掛けられてたわけ?」
男子の言葉に弘志君は首を傾げている。
それはないはずだ。
だって、貴也とマリナがつき合っていたのは1年も前なんだから。
「この写真の日付、今年の6月じゃん」
え……?
驚いて、つい振り向いていた。
一瞬マリナと視線がぶつかる。
マリナの顔は真っ青で、今にも倒れてしまいそうだ。
嘘だ。
そんなことありえない。
だって6月って今じゃん……。
慌てて視線を貴也へ移すと貴也は教室から逃げ出すところだった。
一体何?
どうなってるの?
すーっと血の気が引いて行くのを感じる。
まさか2人は別れずに、ずっと付き合っていた?
それなのにマリナは弘志君とも付き合っていたってこと?
わからなくて頭の中は混乱状態だ。
「ちょっと話がある」
弘志君がマリナへ向けて、そう声をかけていた……。
☆☆☆
貴也とマリナはずっと付き合っていた。
そしてマリナは弘志君とも付き合っていた。
あたしは左右に首を振ってその考えを打ち消した。
だとすれば、浮気相手は弘志君の方だ。
それはあり得ない。
だってマリナは教室で弘志君とずっとイチャイチャしてきたのだから。
その様子を見ても貴也は特に変化を見せてこなかった。
ということは……。
考えられることはひとつだけ。
貴也とマリナは最近になってまた付き合いはじめたのだ。
今年の、6月から……。
マリナは6月に入ってからイジメられるようになったが、弘志君は助けようともしなかった。
マリナは元カレの貴也に相談でもして、また惹かれたのかもしれない。
だとしたら、浮気者は貴也の方になる。
貴也は同じころ、あたしにも声をかけてきていたのだから。
そう考えると体がカッと熱くなるのを感じた。
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