第25話
☆☆☆
2度目の放課後デートは1度目よりも緊張せずに済んだ。
昨日と同じ公園のベンチに座り、子供たちが遊具で遊ぶ姿を眺める。
こうしてのんびりしていると、あたしもいつか子供を産むのかなぁなんて、遠い未来の創造をしてしまう。
だから一回目は聞き逃してしまった。
「え、なに?」
貴也がなにかを言ったということは理解できたので、あたしは聞き返した。
「俺と付き合ってくれない?」
見ると貴也は耳まで真っ赤にしてそう言ったのだ。
一瞬時間が止まったかと思った。
貴也の言葉が信じられなくて、呼吸すらできない。
「えっと、あの」
とにかく早く何か言わないといけないと思い、無意味な言葉ばかりが出てくる。
おちつけあたし!
心の中で自分を叱咤して、ようやく貴也を真正面からみることができた。
「あたしでいいの?」
「美弥がいいんだ」
しっかりとした返事に、心が舞い上がっていくのを感じる。
神様、これは現実でしょうか?
夢を見ているんじゃないでしょうか?
そんな風に考えながらあたしは知らず頷いていた。
貴也の表情が一瞬にして晴れやかになる。
「やったぁ!」
両手を拳にしてガッツポーズを取る。
遊んでいた子供たちが大きな声に驚いてこちらに注目している。
「そ、そんなに喜ばなくても……」
慌てて言うあたしの体を大きな両手で抱きしめてきた。
異性をこれほど身近に感じたことなんてないあたしは、一瞬で頭の中が真っ白になってしまう。
「めちゃくちゃうれしい! これからよろしくな!」
そいう貴也への返事もできないくらい、あたしは舞い上がっていたのだった。
☆☆☆
翌日、教室へ入るとすぐに貴也が駆け寄ってきた。
「昨日は俺だけ盛り上がっちゃってごめんな」
そう言って後ろ頭をかく。
「ううん。あたしだって嬉しかったし」
正直今もまだ夢を見ているようだ。
あたしは目の前に立つ貴也を見上げた。
長いまつげに、艶やかな髪。
すっと通った鼻筋は本当にモデルみたいだ。
こんな人が自分の彼氏になっただなんて、信じられない。
こうして2人で会話をしているだけで幸せな気持ちで満ちていく……。
そんな幸せをぶち壊すような笑い声が教室に響きわたり、あたしはハッと息をのんで振り向いた。
見るとそこには3人の女子生徒たちがいて、マリナを取り囲んでいるのだ。
マリナの髪にはゴミがくっついていて、足元にはゴミが散らばっている。
すぐに頭からゴミをかぶせられたのだとわかった。
マリナはその場に呆然として立ち尽くしている。
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