第4話

☆☆☆


それから15分後。



すべての宿題を終えたあたしは解放感に包まれていた。



少し難しい問題だったけれど、どうにか解けた。



やるじゃんあたし!



苦手が数学を1人で片付けたことが嬉しくなり、自然とほほ笑んでいた。



心の中で自分を称賛し、またベッドに横になる。



勉強終わりにあおむけで寝てスマホをつつくのは、いつもの癖だ。



「あれ、マリナじゃない」



あたしは呟いて瞬きをした。



さきほど鳴ったのはマリナではなく、オススメアプリの広告が届いた音だったらしい。



なにか面白いアプリでもあるかな?



何気なく画面をスクロールしていく。



いくつかゲームアプリが紹介されているが、どれも1度はダウンロードしたことのあるものばかりだ。



自分には合わなくて、やめてしまったけれど。



そんな中で1つだけ、見たことのないアプリがあった。



「リアル彼氏……?」



メールに書かれているタイトルを読み上げる。



聞いたことがないゲーム名だ。



タイトルに惹かれたあたしはURLをタップしてみた。



そこに表示されたのは乙女ゲームだ。



「あぁ、こういうゲームかぁ……」



思わず落胆の声を漏らす。



ゲーム内容はストーリーに沿ってキャラクターとの恋愛を楽しむものだとわかった。



あたしが好きなのはパズルゲーム、もしくは推理ゲームだ。



こういう恋愛系のゲームはあまり興味が持てなかった。



「ま、タイトルからして恋愛ものっぽいよね」



呟き、すぐにサイトを閉じてしまおうと思ったが、あるうたい文句が目に入った。



『現実に彼氏がいるようなリアル感は、このアプリだけ!』



「リアルだからリアル彼氏ってタイトルなんだ……」



普段なら恋愛ゲームには興味がないけれど、『リアル』という部分に惹かれている自分がいた。



このゲームはどのくらいリアルな設定になっているんだろう。



これを使えば本当にデートとかした気分になるんだろうか?



何度か恋愛ゲームをプレイしたことはあるけれど、どれもこれも現実離れしたストーリーばかりで途中で投げ出してしまった。



今回のゲームはそうじゃないんだろうか?



もしかして、イラストがすごくリアルとかそういう意味なのかも知れないし。



首をかしげつつも、アプリのダウンロード画面から離れることができなかった。



なぜなら、あたしの中にある考えが浮かんできていたからだ。



このゲームをプレイして、それが本物であるかのようにマリナに話すのはどうだろう?



毎日毎日、嫌になるほどノロケ話を聞かされているのだ。



少しやり返すくらい、きっとみんな許してくれる。



ストーリーにリアリティがあるかどうかは、プレイしてみないとわからない。



試しに広告に出てきているキャラクターのイラストを確認してみると、さすがにイケメン揃いだ。



弟系の可愛いキャラもいれば、大人っぽいお兄さんのキャラもいる。



好きな見た目のキャラがいればやってみてもいいかもしれない。



そう思った時だった。



ひとつのキャラに目を奪われた。



青いサラサラの髪に、シャープな鼻筋、ネコのような奇麗な目をした男の子だ。



「カッコイイ!」



思わず声を漏らしていた。



このキャラはまさしく自分好みだ。



青い髪の男の子なんてそうそういないけれど、それはそれでゲームのいいところだ。



「う~ん、やってみようかな……?」



面白くなければすぐに消せばいいし、もしかしたらマリナにちょっとした復讐もできるかもしれないのだ。



そう考えると、ワクワクしてきた。



「無料だし、ちょっとだけならいいよね?」



あたしはアプリのダウンロードボタンをタップしたのだった。

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