キャンプファイヤー

俺たちの目の前には、燃え盛り、ゆらゆらと揺れる炎がある。


「火って、いいねえ……」


しみじみと如月さんが、ハイチェアに座りながら、自分の膝に頬杖をついてつぶやく。


「翔お兄さま! 危険ですよ! これ、消さないと!」

「はいはい。危険じゃないから、大丈夫だから」


翔は火をつけた人なので、優奈ちゃんにせがまれている。


「ゆ~な~?」

「ひ」


優奈ちゃんがしつこすぎるので、枝豆さんは怖い姉の顔になり、優奈ちゃんをローチェアに戻した。


ちなみに、キャンプの椅子にもハイチェアとローチェアがあるんだ。わからなかったらGoogle先生で検索。


俺はハイチェアが好き。


「あたし、もう寝ます」

「そう? じゃあ優奈、歯磨きしようね」


枝豆さんは優奈ちゃんと歯磨きに向かった。


「星、綺麗だね」


如月さんの言葉に、俺も空を見上げてみた。


「本当だ、とってもきれい!」


空には満天の星空が広がっていて、綺麗の一言。


翔がこっそり耳打ちしてきた。


「コットで見るといいぜ」

「サンキュ」

「なにこそこそ話してるの?」

「なんでもない! それより如月さん、コットで見てみようよ、星!」

「え? うん」


俺はテントの横にあるコットの上に寝転んだ。如月さんは隣にしゃがんでいる。


コットは、ベッドみたいなものだ。こちらも、わからなかったらGoogle先生で検索だ!


「わあ、綺麗……」


コットでみると、プラネタリウムのような感じがする。


山だから明かりが少なく、星がきれいに見える。


自然のプラネタリウム、最高すぎる。感動。


「本当? そんなに違うの? 神宮くん、替わってよ!」

「うん、いいよ」


本当はもう少しみていたかったが、如月さんの頼みなら仕方がない。俺は静かに如月さんにコットを譲った。


如月さんが寝転ぶ。


「ホントだ、綺麗! 自然のプラネタリウムだね!」

「ね」


如月さん、俺と同じこと言ってる。


こんなに満天の星空だと、いつもわかるオリオン座がどこにあるのかもわからない。


「五十嵐くん一人もかわいそうだし、もどろっか」

「そうだね」


自然のプラネタリウム、もう少し堪能していたかったけど、翔がかわいそうだし戻ることにした。


そして俺たちはまた椅子に座る。


「こういうしんみりした感じって、本音トークとか恋バナとかするときだよね」

「そうだけど、恋バナはちょっと……」


如月さん、今この状況で女子一人ですよ? 恋バナ話せるわけないでしょ?


「はは、わかってる。私だって恋バナ、今は自分のこと話せないから」

「なんで?」

「わああ、なんでもないから! 本音トークとかは?」

「特にないかな。でも、学校一の美少女と学校二の美少女と、こんなに仲良くできるなんて嬉しい」

「ふぉえも!」

「五十嵐くんは飲み込んでから話してね。それは嬉しい。学校一の美少女だなんてね、そんな」


本当にありがたいんだよな。


最近ファンから、一緒にいることを認められつつもあるんじゃないかって思うんだ。


「だから、その……これからも、一緒にいてほしいな、なんて……」


うお、これ、結構恥ずかしいやつ。もはや告白みたいな感じじゃん!


俺は熱く、赤くなる。


如月さんもそのようだった。


「あ、ありがとう、神宮くん……私も、一緒にいてほしいな、なんて……」


もじもじとしている如月さんもとてつもなくかわいい。


恥ずかしいのもあり、体が熱い。夜の冷たい風が、今は心地よい。


「俺もだぜっ!」



翔がにかっと笑いながら手を挙げる。


そうだ、あまあまな雰囲気のながされて、翔の存在を忘れていた。


「翔、後片付け、お願いできるか?」

「おうよっ」

「俺、そろそろ寝ようかな…」

「私も……」


俺も如月さんも歯磨きはすませてある。当然、テントは男女別だ。


「おやすみ!」

「おやすみ」

「おやすみなさい…」


俺と如月さんは、それぞれテントに入った。

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