まさかの再会……らしい

「よ~し、公園についたね!」


俺たち四人はリサーチしていてくれた如月さんの案内で公園についた。


公園にはすべり台やブランコ、ジャングルジム、ベンチ、タイヤ飛びなどがある。


公園のまわりは大きな石で囲まれているようだ。


「豆、公園って久しぶり~っ!」

「わかる~。中学生になると行きづらいよね」


俺も二人の気持ちがわかる。中学生の男子が一人で公園で遊んでるだなんて、恥ずかしい。


奥のベンチに座っている、俺たちより小さいの女の子が、こちらを見つめていた。


その女の子は、髪は茶色で、ゆるふわなみつあみ。瞳はとってもかわいらしく、まっすぐ。妹にしたくなるような可愛さだ。(柚葉にはナイショだぞ)


すると、如月さんと笑顔で話していた枝豆さんが立ち止まる。女の子のほうを見つめて。


「あれ、もしかして……優奈ゆな?」


そして、枝豆さんの視線の先の彼女が、口の動きを見て顔をぱああっと輝かせ、こちらに向かって両手を広げながら走ってきた。


「湖羽お姉さま~!」

「うわっ」


優奈ゆなと呼ばれた少女は、枝豆さんに抱き着く間際にそう呼び、ぎゅ、と抱き着いた。


「やっぱり優奈なんだ⁉」

「湖羽……お姉、さま?」


喜びを隠しきれない枝豆さんに対して、俺、如月さん、翔はぽかんとした顔になった。


如月さんが驚きのあまり声をもらした。俺も同じ気持ちだが。


「え、枝豆さんって、妹いたの?」

「ちっ違うよっ、妹じゃなくって―――」


枝豆さんの言葉を遮るように、少女は名乗った。


「あたしの名前は、東雲しののめ優奈ゆなです! 湖羽お姉さまとは、ママ友でつながっていました! ですが、最近湖羽お姉さまが忙しくって……」

「ごめんね、優奈! 勉強とか…いろいろ忙しくってさ!」

「ホントですよ、お姉さま! でも、これからはたくさん遊べ……ますよね?」


枝豆さんから離れ、上目遣いでうるうると瞳をうるませる東雲さんをみて、枝豆さんは声をつまらせた。


「わかったわかった!」

「本当ですか?」

「本当だよ⁉」

「ありがとうございます!」

「それで、東雲さん――」

「優奈でいいです。ほかのみなさんも」

「優奈ちゃん、今日はなぜここに?」


今日はたまたま、お金持ちの枝豆さんとキャンプに来ているだけ。キャンプ場がたっくさんあるなかで被るなんて、すごすぎる。キャンプに来る日が被るのも。


「あたしは自然不足だったので。公園に行きたいって言いました。それに二年も湖羽お姉さまに会えなくて湖羽お姉さま不足だったので、あえてうれしいです」


枝豆さんがよしよしと優奈ちゃんの頭をなでると、優奈ちゃんは笑顔になる。


「ところで」とこちらを向いて優奈ちゃんがきりだした。


「あなたがたは、湖羽お姉さまのお友達ですか?」

「あ、自己紹介、まだだったね。私は如月花音。湖羽のお友達だよ!」

「ふむ。美人で明るい方が花音お姉さまですね」

「お、お姉さま⁉」


如月さんはかわいらしい優奈ちゃんにお姉さまと呼ばれ、顔が赤い。


「俺は五十嵐翔だ。湖羽ちゃんと花音ちゃんのコイツのダチだぜっ! よろしくな!」

「チャラそうな方が翔お兄さまですか」

「‼」


翔はチャラそうと呼ばれた悲しみとお兄さまと呼ばれた喜びがごちゃごちゃしている。


「お、俺は神宮玲。枝豆さんたちの友達だよ。よろしくね」

「玲お兄さまは緊張しやすく、年下に弱い。覚えました」


ううっ。優奈ちゃん、痛いところをついてくる。


俺が顔をしかめていると、如月さんが笑ってきた。


「ははっ、神宮くんが相当なダメージ受けてる。大丈夫?」

「あ、怜お兄さま、すみません」

「だ、大丈夫大丈夫」


ぺこりと頭を下げてくれる優奈ちゃんは純粋な気持ちがあり、俺はつい守ってあげたくなるなと思う。


これは恋愛感情なのだろうか? いや、なんか恋愛感情っちゃぽいけど、恋愛対象外というか。


「あ! そうだ! あたし、いいこと思いつきました」

「うん、なになに?」

「あたし、湖羽お姉さまたちと一緒にキャンプします!」


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