運動会 その参 借り物競争

「次は借り物競争です。選手は入場門に集まってください」


すると枝豆さんがふんと鼻をならす。


「豆、借り物競争の選手なの!」


おお、今度は枝豆さんか。


枝豆さんはなぜか翔のほうをじっとみつめている。


「枝豆さん、がんばれよ!」


にかっと笑う翔。


枝豆さんの顔はかああっと赤くそまった。


「ううううん!いってくる!」


枝豆さんは逃げるように入場門に行ってしまった。


翔は首をかしげている。


……お前のせいだぞ、翔。


「それでは借り物競争を始めます。いちについて、よーい、どん!」


選手が一斉に走り出す。


枝豆さんはほかの選手よりも走るのが遅れている。


応援の声は枝豆さんファンの声しか聞こえない。


枝豆さんはとうとう机までたどり着き、おいてあった紙を開いた。


枝豆さんファンのごくりと唾をのむ音が聞こえる。


枝豆さんファンはかばんに手をつっこんだまま枝豆さんを見つめている。そこまでして貸してあげたいのだろうか。


ついに、枝豆さんが口を開いた。


「あのっ、だれかずんだもちを持っている方はいませんか!?」


………。


ず、ずんだもち?


チラリとみえた枝豆さんの紙には、好きな食べ物、とかかれていた。


これ、大丈夫なのか?


ずんだもちもってる人って、いる?


「あ!枝豆さん、ずんだもちあるよ!」


いたー!!!


まさかのいるしー!!!


手をあげたのは、翔?


「えっ、五十嵐くん????」


枝豆さんは目をまるくしながらも翔に駆け寄った。


そしてなにか話してから、枝豆さんはずんだもちが入ったパックを持ってきた。


「よいしょっと」


そして枝豆さんはゴール!


「お!一位は赤組・枝豆湖羽さんです!」


すごっ。まさかの一位。


枝豆さんが戻ってきた。


「すごいよすごいよ!豆、一位だったんだよっ」

「ね!さすが湖羽だよー!」


興奮してる如月さんと枝豆さん。


なんだか笑えるっていうか、ほほえましい光景だな。


「あ!五十嵐くん、これありがと……」

「ううん、大丈夫!これあげるよ!好物なんでしょ?」


枝豆さんはすこし固まってから、赤くなっていく。


「えええいいの!?」

「うん、いいっていってるでしょ」

「ああありがとう!!」


いや、枝豆さん慌てすぎだろ。


俺はなんだかおかしくて、笑ってしまった。


翔はぽかんとしている。


如月さんも笑っていた。


枝豆さんはしゃがんでうずくまっていた。


その体は燃えるようにあつかった。

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