少女と森

 レティは衛兵との会話の後、街道から離れて歩いている間にも、街道沿いには馬車や人で溢れかえっていた。


 レティは人の目を気にしながら、魔物の住処を避けつつ森へと向かっていく。


"おい! そこに入るんじゃないぞ、おい!"


"聞こえてんだろ、おい!"


 レティは聞こえてくる言葉に過剰に反応してしまい、アズから教えられた植物を操る魔法が付与された石を扇状に#散撒__ばらま__#いた。


 これは無防備すぎるレティに護身用にといくつか渡されていたものだった。


 ただしレティには教えられていなかったが、多く使えば付与した術者に使用者を知らせる機能もあった。


 レティは聞こえる声を背に、森の奥へと走り続けた。


 足が痛くて立ち止まった頃には森の奥過ぎて、来た道も分からなくなっていた。


「疲れた。 なんか聞こえたから、追いかけてきたのかと思っちゃった。 戻りたくないし、このまま向かおう。 なんかさっきから木が動いてるように見えるけど、気のせいかな?」


◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇


 所変わって、森の入り口ではに拘束された男を護衛騎士が解くのに躍起になっていた。


 男は解放された後、蔦の先を睨みつけながら馬車へと戻っていく。


「あれはなんだったと思う?」


「魔法使いというよりも、その弟子ではないでしょうか? 魔法というよりも、何かが付かされた物だったのかもしれません。 この破片を研究所に持っていけば誰の物なのかが分かるかと思われます。」


「そうか。 では、まずはそこへ行こうか。」


 彼らは知らない。


 この破片を巡って、研究所が荒れてしまうことを...。

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