魔法使いアズ

 魔法研究所の若き所長、アズ。


 決済やら、書類やらは他の者があたり、アズは魔法使いたちの指導書を作成していた。


 だが今日に限って、誰かが訪ねてきたようだった。


 執務室の扉を開けて、廊下を突き進んで騒がしい部屋へ入ってみると、伯爵家の子息が騎士に守られながら歩いている時だった。


「所長、ご機嫌よう。 ちょっと魔法について尋ねたいことがあったので、ここへ来ました。」


「何かな? 生憎、時間が勿体無いから早く本題に入ってもらいたい。」


「ええ。 では僭越ながら、この破片の制作者を調べて欲しいのですよ。」


 子息が渡してきたのは石の破片だと思われるが、アズにとって何か懐かしい気もする物だった。


 それも子息の言葉に答えの糸口が見えてしまうことで、怒りが湧いてしまう。


「これは...。 ...一体どこで手に入れたのでしょうか?」


「実は先程、森に入って行く少女を見かけまして。 危ないと思い、手を差し伸ばそうとすると、いくつか石を投げてきて、逃げてしまったのです。 少女の投げた石は割れた途端、蔦が出てきて私を拘束したのですよ! まあ騎士が解いたおかげで命拾いしましたがね。」


「そうでしたか。 …残念です。」


「? 何がでしょーー」


「ーーお前たち、この者らを直ちに拘束せよ!」


 アズの声と共に周囲にいた魔法使いたちが一斉に伯爵家の子息を騎士ごと魔法を使い、拘束させた。


 いきなりの出来事に呆然とする子息だったが、騎士が1人気絶するのを間近で見た途端、騒ぎ出すもアズが即座に眠りに着かせた。


「直ちに、この破片のこと、そしてその少女について問い質し、それを報告せよ!」


『はっ!』


 子息と騎士から一部始終を見ていた光景を語り出すのに時間はそれほど掛からなかったが、アズはその少女がレティなのだと仮定してしまうと、落ち着けなかった。


 その夜、フレアが突然訪ねてくるのだった。

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