親猫

——Side母猫


 私は旦那が呼んでくれた数匹の猫に頼りながら、五匹の子を産むことができた。産んでからしばらく経った頃に旦那が一匹の猫に連れられて戻ってきた。


 旦那は「大丈夫だったか」聞いてきたから労って、子供達を見せた。旦那は子の顔を舐めたり、擦り寄ったりしながら一匹一匹に父だと挨拶していく。


 もう少し何かないのかと思うのだが、旦那は子供達への挨拶が済むと狩りに出かけてしまった。すると木々の影から見つめてくる黒い猫に気が付いた。


「(何をしているんだか…)リーダー!」


「…っ!」


「うちの子を見ますか?」


「…ああ。可愛い子達だね、母親そっくりな子も居るね。」


「ええ、本当に可愛い子達です。」


 この黒い猫は猫の集会を仕切っていたので、周りからリーダーと呼ばれている。リーダーだからといって喧嘩に強いわけではなく、統率が誰よりも取れるからである。


 そしてこの黒猫は子猫が産まれると何故か見たがるので始めは嫌っていたが、いつからか子猫が落ち着くらしく、馴染んでいた。


 今回も同様だったのだが、いつもよりも他所他所しい黒猫であった。何かを隠そうとしているような、そんな雰囲気だが、その何かが分からない母猫は見なかった事にしたのだった。



——Side父猫


 俺は美しい白猫の番である。この辺では白猫というと一匹しかおらず、そこに惹かれたと言っても過言ではないだろう。


 その番である白猫が出産すると知った途端、何をするか戸惑ってしまい、集会にいる猫に助けを求めた。集会では賑やかだったが、俺が入ったせいか静かになった。


 だが、その中でも集会のリーダーが命令すると数匹程、向かってくれた事にほっとした。早速向かおうと思い、駆けようとするとリーダーに止められてしまった。睨んでしまったが、立ち合わない方が良いと促され、ゆっくりとした足取りで向かう事になった。…リーダーである黒猫を連れて。


 向かっている最中、リーダーから近況や狩りについて聞かれたので、簡潔に伝えていった。話が終わろうとした頃に、向かってくれた猫のうちの一匹に呼び出された。


 リーダーを置いてきてしまったが、白猫の側へ行くと五匹の小さな猫が白猫に舐められていた。その光景を見た途端、喜びで頭が一杯になって、舐めながら父であることを強調して挨拶していった。


 自分の子だと分かっていても、どうも心配してしまった。だがそれも小さな猫の中で白い猫が目に入った。その小さな白猫は母親似だと感じたが、同時に守りたいという庇護欲が湧いてしまい、狩りに向かう事にした。


 その後、狩りから戻ると手助けしてくれた猫達から、何故離れてしまったのかと叱責を受けるのだった。

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白猫に転生する 青緑 @1998-hirahira

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