現状把握
初めは温かい何かに包まれるような感覚だった。それも一瞬のことで、気付けば寒いと思った。
まだ周りを見ても見えない。でも匂いで自分と同じ匂いを持った者がいることが分かると、そちらに向かってみる。
少し感覚で歩いてみるも、進んでいるのかすら白猫には分からなかった。匂いのする距離も変わらない。すると自分の体が地面から手足が離れ、首に違和感を感じた。
「ごめんね、私の可愛い子。すぐ兄弟の元へ連れて行くわ。」
「う…ん…」
そんな一瞬の後、先程まで匂っていた自分と同じ匂いを持つ者が近づくのを感じた。眠くないと思っていても、居心地良い場所だからか睡魔には勝てなかった。
——それから数日過ごした後
白猫はやっと目を開けられるようになった。だが、白猫は目を開いて始めに見た木が大きい事に驚いた。周囲を見れば、先程まで一緒に眠っていただろう場所には子猫がいる。
一瞬のことで戸惑っていたが、地面を見れば自分の手足と思っていたものが目に付いた。それは紛れもなく猫の足だった。そして、側で匂っていた匂いに向くと大きな白猫が丸くなって眠っている。
(ああ。私、猫になったんだ。ってことは、あそこの大きい猫は私のお母さんか…な…?匂いも何となく似てるし…)
一緒に眠っていた猫は白猫の兄弟のようだった。確か眠っている時に兄弟姉妹だと耳にしたと思い起こしている白猫。
そんな白猫も自分の兄弟姉妹である四匹を眺めていたが、ふと思い出した感覚で上を見上げると、全身の毛が逆立つほど驚いてしまう。
(しかも…、魔素が少なくない? いや、少な過ぎでは? う…ん…)
魔素は白猫の知る中で空気中に漂っている物質であり、この魔素を取り込むことで魔法を使うことができる。
上を見上げていると、白猫の母猫が体を起こして考え中の白猫に近づく。
「あなた、どうしたの?」
「母さん。魔素って知ってる?」
「いいえ? 知らないけど、そんなのどこで知ったの?」
「ううん、なんでもない。」
「まあ良いわ。あなたも、もう少し眠りなさい。近々、狩りをしに山へ行くからね?」
そう言われてしまっては眠りにつかなければならないと察した白猫は兄弟姉妹が眠る場所へ向かい、一匹分空けた場所で丸くなった。
(ここは魔素が少ないから、今のうちから集めておこうか…な…? 邪魔されないためにも、ちょっと離れておこう…)
眠りについた白猫は漂う魔素を取り込み続け、体に魔素を馴染ませていく。その白猫を母猫が見つめているとも知らずに…。
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