白猫に転生する
青緑
誕生
薄暗い森の中、雄猫と雌猫がいた。雌猫は湿った土の上で丸くなり、雄猫は周囲を警戒しているのか彷徨いている。
雄猫は雌猫の安全を確保すると、その場から離れて駆けた。辿り着いた場所には、猫が多く集まっており、一匹の黒い猫を中心に扇状に広がっていた。
その集まりの半ばまで雄猫が向かうと、声を張り上げた。すると、中心にいた黒猫が驚いた形相で、他の猫に命令する。
「…すまん。誰か手を貸してほしい。子供が産まれそうなんだ!」
「! 分かった。おい、数匹行ってこい」
「ありがとう、リーダー」
「なぁに、産まれたての子を見せてくれれば満足だ。約束を忘れなければ、俺的にはどうでもいいんだ」
黒猫が命令するなり、数匹の猫が雌猫のいる場所へ向かっていく。その後ろを雄猫と黒猫が歩いて向かう。黒猫が動くと、集まっていた猫は用事が済んだかのように各々去っていった。
——しばらくして…
雌猫の元へ向かった数匹の猫のうち一匹の猫が迎えに来た。その猫の案内に従って、雄猫は急いで向かっていく。その後から黒猫も付いていく。
案内に従って向かうと、言葉にならない鳴き声が聴こえてくる。そっと近づいて行くと、雌猫が木の根を背にして小さな猫を舐めていた。
小さな猫は雌猫にされるがままだが、まだ目は開いていない。それでも雌猫の位置が分かるかのように雌猫に向かって一歩一歩向かう。
その光景を目の当たりにした雄猫は雌猫に声をかけて、雌猫に寄り添った。その雄猫の後ろから黒猫は覗いていた。
黒猫は雄猫と雌猫が寄り添い、その側を小さな猫達が一箇所に固まっているのを眺めている。産まれた猫は五匹いたのだった。
だが眺めていた黒猫は、その中で一匹の小さな白猫を見た途端、体中が温かくなるのを感じた。雄猫に声をかけられるまで、黒猫はその産まれたばかりの白猫を見つめ続けた。
小さな白猫は黒猫に見つめられている事には気付かず、ただただ佇んでいた。
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