第32話 反撃の準備 ※アーヴァイン王子視点
クリスティーナとの話し合いは、失敗に終わった。わざわざ出向いてやったのに、彼女は助けてくれなかった。生意気な護衛を引き連れて、屋敷から追い出した。
王子である、この私を!
いつから、あんなに偉そうになったのか。もともと自分勝手で、周りのことなどは考えない女だった。私との婚約を破棄して以降、さらに彼女は増長したのか。
彼女だけじゃない。彼女と一緒に居た護衛の男も生意気だった。私に対して、とても失礼な物言いをしたのだ。許せない。絶対に、許すことは出来ない。
不敬罪で処刑してやろうと思ったのに、騎士の連中が私の命令を無視した。何故、奴を捕まえようとしないのか。どうやら、あの男は有名な傭兵だったらしい。騎士達は恐れて、生意気な男を捕まえることが出来なかったのだ。
なんて使えない連中だろう。当然、そんな騎士連中はクビにした。いざという時、役に立たないのであれば意味がない。奴らに、王国の金を支払うのは勿体無いから。ただでさえ、今は大変な時期だというのに。
活動予算が削られて訓練不足とか、装備の手入れが出来ないだとか。そんな文句を言われても困る。結局、動けなかったのだから。王国の騎士として雇っている以上、最低限の仕事くらいこなせるようになって欲しいものだ。
残念ながら奴らはクビにしたので、汚名返上の機会は二度と訪れないだろうが。
今回の話し合いで、分かったこともある。やはりクリスティーナは、大量の資金を隠し持っているのは間違いない。あれだけ大きな屋敷を保有していて、有名な傭兵を護衛として雇うことが出来るのだから。かなりの大金を貯め込んでいるはず。
そのお金があれば、今の王国の困難な状況を立て直す事も可能だろう。どうやって彼女からお金を巻き上げるべきか。
クリスティーナは、ずる賢い女である。貴族令嬢のくせに、金儲けに関する知識が豊富だった。資料を使って詳しく説明されたが、私には知識がない。話を聞いても、わからない。だから、不正を見破ることが出来なかった。指摘できなかった。下手に指摘したら、そこから反撃されるのも分かりきっていた。
だから、あの場所では大人しくしておくのが正解だっただろう。腹がたつけれど。
どうにかして反撃したい。逆らったことを後悔させてやりたい。あまり強引な手は使いたくなかったけれど、手段を選んでいる余裕はないのかもしれない。
仕方ない。ここは多少のリスクを負ってでも、強引に動くしかないようだ。お金を使って兵士を集め、クリスティーナの屋敷に押し掛けるしかないか。今度こそ、私の言うことを聞いてもらう。
あの屋敷には傭兵で護衛の男が居る。彼の他にも、戦力を揃えているようだった。あれに対抗できるぐらいの戦力を集める必要があるだろう。
これは無駄遣いではなく、必要経費だ。王国の平和のため、少し遠回りになるかもしれないが、早急に解決しておくべき問題。速攻で片付ける。
騎士は敵を恐れて、命令に従わなかった。ならば、大量の兵士で押しかければ問題ないはずだ。今度は失敗しないように、数で押す。そのための準備を整えなければ。敵に気付かれないよう、慎重に。
私は静かに、頭の中で彼女たちに反撃するプランを練っていった。
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