第31話 貧相
「な、なにをしている!? 早く、この無礼な男を捕まえるんだッ!」
動こうとしない騎士に、慌ててアーヴァイン王子が指示を出す。しかし、それでも騎士たちは動かない。いや、動けないようだった。そんな状況で、護衛のホマリオが口を開く。
「そんな貧相な装備と、その程度の実力で戦うつもりか? 止めておけ」
「きっ、貴様ぁ! 彼らは誇り高き――」
「黙れよ。お前が、騎士たちの装備をケチったせいで、勝負にもならない。金が無いからと言って、そこまで節約するなんて最悪だぜ。俺だったら絶対にそんな雇い主、ゴメンだね」
「なっ……、っく!」
ホマリオの指摘に顔を真っ赤にして怒るアーヴァイン王子だったが、反論の言葉が出てこなかったようだ。悔しそうに歯ぎしりをしながら睨みつけているだけ。頼りの騎士も、ホマリオの視線に硬直している。彼の部下が、剣に手を掛けた状態で構えている。騎士たちに動きがあれば、即座に対応してくれそうだ。
「話し合いは終わりだろう? 用事が終わったのなら、屋敷からご退場願おうか」
「ぐぬぅ……」
アーヴァイン王子は苦虫を噛み潰したような顔を浮かべるが、打つ手は無いと諦めたのか、そのまま大人しく引き下がる。そして、屋敷から立ち去っていった。
私が望む通り、護衛のホマリオはアーヴァイン王子を屋敷から追い出してくれた。彼は、とても良い仕事をしてくれた。
「申し訳ありません、お嬢様。勝手に動いてしまって」
「大丈夫よ、ホマリオ。貴方にも考えがあったのでしょうから」
アーヴァイン王子が去った後、先程の野蛮な態度とは打って変わって丁寧な口調で謝り、私に頭を下げるホマリオ。私は気にしていないことを彼に伝えた。おそらく、アーヴァイン王子の敵意を引きつけようとしてくれたのが分かったから。
彼に感謝こそすれど、咎める気はない。
「だけど、あまり無茶はしないでね。あんなのでも王子だから、下手をしたら本当に不敬罪で処刑されてしまうわよ? その時、私の力で守りきれるかどうか分からないから」
「それが護衛の仕事です。仕事分の給料は、しっかりと頂いていますから。ちゃんと働きますよ」
「そうなのね。ありがとう、ホマリオ」
「いえいえ」
ならば、護衛の仕事をしっかりとこなしてくれているホマリオを評価して、給料を上乗せしてあげましょう。彼の部下にも働きに見合う報酬を与えるべきよね。
それから、ちゃんと仕事が出来るように十分な装備も用意してあげよう。あの人の失敗を反面教師にして、これからもお金をケチらずしっかり使うことにするのを忘れないようにしないと。
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