第26話 娘の行方 ※ミントン伯爵家当主視点

 話さなければならないことがあるから娘のクリスティーナを出せと、屋敷に王国の兵士がやって来た。どうやら、アーヴァイン王子の命令らしい。


 屋敷から追い出したクリスティーナは、行方知れずだった。捜索を続けているが、まだ見つかっていない。どこに行ってしまったのか。生きているのか死んでいるのかすら分からない。おそらく、仲良くしていた商人の誰かに助けてもらったんだろうと予想しているが、情報が出てこない。一体、どういうことだろうか。


 ミントン伯爵家との縁を切るという手続きも、王国に申請済みだった。けれども、その申請が受理されたという報告はなかった。なので、まだ王子は知らないのか。


 とにかく、屋敷に彼女は居ない。出せと言われても、出すことは出来ない。そして呼び戻すことも不可能だった。どこに居るのか、分からないから。


「嘘じゃないだろうな!?」

「本当だ! どこに居るのか、分からないんだ!」


 兵士の詰問に、私は答える。嘘なんかついていない。本当に分からないのだ。


 私だって、クリスティーナがどこに行ったのか知りたい。部屋に隠していたはずの財産が見つからず、どこに隠しているのか問い詰めてやりたい。


 なんの抵抗もせずに、言われるがまま屋敷から出て行ったのは、分かっていたからなのだろう。私が、彼女の莫大な財産を発見することは不可能だと。何らかの対策をしていたから、部屋から見つけ出すことが出来なかった。事前に部屋から運び出したのだろうか、それとも巧妙に隠しているから見つけ出せないのか。


 部屋から見つけ出せないから、クリスティーナに聞くしか方法はない。財産は今、どこにあるのか。


 クリスティーナを連れてこいと王子から命令された兵士達は、どうすればいいのか困っているようだった。このままだと、任務に失敗するだろう。そうなれば、王子に叱責されるに違いない。だから、兵士達は焦っているようだ。


 私を放置して、私の目の前で彼らは話し合いを始めた。


 ここに来れば、身柄を確保できると思っていたのに。行方知れずらしいが、どこに行ったというのか。屋敷の他には、どこを探すべきなのか。


 傍らで話を聞きながら思った。彼らがクリスティーナの行方を調べて、連れ戻してくれるのなら助かるのだがな。そう簡単にいかないだろうか。


 しばらくして話し合いを終えた兵士が、私に告げてきた。


「とりあえず、貴方を王城に連れて行く。アーヴァイン王子にも説明してもらおう。クリスティーナ嬢を屋敷から追い出した後、どこに行ったのか知らないことを王子に説明してもらう」

「……わかった」


 面倒だが、兵士の指示に従うしかないかないだろう。王城まで行き、王子に今回の件について説明をして、しっかり把握してもらおう。そのためにも、直接会って話をする。


 屋敷から居なくなったクリスティーナのせいで、面倒なことになってしまったな。これは、あの子を見つけ出して責任を取ってもらうしかない。


 私に迷惑をかけたお詫びとして、財産を隠した場所を吐いてもらう。そして、今度こそ絶対に財産を私のものにする。


 縁切りの手続きも取り下げて、ミントン伯爵家に連れ戻そう。そして、家のために働いてもらう。それが、私に対する詫びだ。文句は言わせない。

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