第6話 運命の出会い ※アーヴァイン王子視点

 昔から納得できなかった。なぜクリスティーナが、あんなに評価されているのか。彼女は、お金を無駄遣いすることが得意なだけなのに。あんなにも金遣いが荒くて、なんで評価が高いのだろうか。私には、理解不能だった。


 婚約相手であるクリスティーナが持ってくるのは、大量の金を使った催し物の予定ばかりだった。あんな無駄遣いに、何の意味があるのか。私には理解できない。


 そんなことより、もっと王国民のことを考慮して、税金を下げるための政策を考えるべきじゃないのか。それが、王としての仕事。それを彼女は分かっていない。私が何度もクリスティーナに指摘した。それなのに、彼女は聞く耳を持たなかった。金を無駄に浪費することを止めようとしなかった。


 毎晩のように貴族達をパーティーに招いて、無駄な浪費を繰り返すだけど。それが必要なんだと、彼女は言い続けた。


 本当に意味が分からない。なんで貴族達がパーティーを開催して遊ぶことが、民のためになるのか。ただ、遊ぶための屁理屈を並べているだけだろうに。


 そんなことよりも、節約して税金を下げるほうが王国民のためになる。


 私の考えは間違っていないはずだ。けれど、多くの愚かな貴族達は浪費することを美徳としているようだ。


 貴族という立場を利用して好き勝手に、民から徴収したお金を自分の娯楽のために浪費している。


 そんな無駄なことを繰り返し続けるせいで、ロアリルダ王国が発展していく速度が遅いのだろう。周りの国に、豊かさで負けている。正しく生きていれば、今頃もっと豊かになっていはずなのに。


 それを邪魔しているのが、クリスティーナ達だ。無駄遣いをして、王国の豊かさを奪っている。自分たちの娯楽のために浪費している。許せない。


 それなのに、誰も私の意見に賛同してくれない。陛下でさえも、ロアリルダ王国の現状を理解していないというのか。彼女達のような愚かな行為こそが、正しいというのか。


「クリスティーナの活動は正しい。彼女に全て任せておけばいいのだ。お前は、何も口出しするな」

「ですが!」

「くどい」


 そう言って、陛下は何も聞いてくれない。あの女の言いなりで、全てを任せているだけ。ロアリルダ王国を治めるべき王だというのに。


 そんな、悶々とした気持ちを抱き続けて何も出来ない日々を過ごしていた。そんなある日のこと。




 とあるパーティーに参加したこときのこと。貴族が開催するパーティーなんて参加したくないけれど、どうしても断ることが出来なかったので、その時は仕方なく参加した。


 一緒にパーティーに参加をしたクリスティーナは、他の参加者たちと親睦を深めていた。その無駄に豪華なパーティーを、存分に楽しんでいた。やはり理解することは出来ない。私は、その集団に加わることを拒否した。


 とにかく、こんな場所から早く立ち去りたい。会場から少し離れた場所に立って、あんな愚かな連中と関わらないように、時間が過ぎるのを待っていた。


 ふと横を見ると、私と同じように不機嫌な表情を浮かべた少女が立っている。


「もったいない」


 彼女が一言、ボソッとつぶやいた。騒がしい会場内で、その少女の声はハッキリと聞こえてきた。その言葉を聞いた私は、もしかしてと思って私は少女に話しかける。


「どうかしましたか?」

「あ、いえ……」

「もしかして、あの豪華絢爛なパーティーが苦手なのですか?」

「……はい。実はそうなのです。どうしても、あの華やかな空間には馴染めなくて」


 どうやら、その少女は私と同じような気持ちを抱いているようだった。私は、その少女にとても興味が湧いてきた。


「そうなのですか、私と同じですね」

「王子様でも、そのように感じるのですか?」


 彼女は、驚いた表情で言った。どうやら、私がロアリルダ王国の王子であることを知っていたようだ。それでも普通に会話してくれる彼女の対応は、とても心地よいと感じた。不機嫌だった気分が、少しだけ晴れた。


「もちろんですよ。ここに浪費するお金があるのなら、民から徴収する税金を下げるほうが、よっぽど有意義だと思うんです」

「それは立派な考えですね。とても素晴らしいと思います」

「君も、そう思ってくれるか?」

「はい、もちろんです。貴方の考えは、とっても素晴らしいと思いますよ」

「……そうか!」


 胸が、ぐっと熱くなった。やはり、私は間違っていないのだ。間違っているのは、婚約相手であるクリスティーナの方だった。そして、私の考えを理解してくれる女性が居ることを知り、嬉しくなった。


 私の考えを、彼女は肯定してくれた。それから私は、パーティーが終了するまでの時間をずっと、少女と会話をして楽しんだ。


 エステルという名前の少女とは、すごく気が合った。その短時間で、とても仲良くなれるほどに。

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