クロユリ

 最愛の息子であるマンサクをロベリアに奪われて、途方に暮れていた。

 そんな時、壁に黒い丸い影が浮かんできた。

「悪魔と契約を結ばないか?」

「契約って?」

黒い影に向かって、どこか期待をしていた。

「お前の代わりにロベリアを殺害してやる。」

「ロベリアを殺してくれるの。それはありがたい」

「では、契約を悪魔と契約を結ぶんだな。」

「ああ、あとオダマキも殺してくれるなら、契約を結んであげてもいいわよ」

「分かった」

あっさりと結んでしまった。代償のことなど何も聞いていなかった。

契約を結んだ次の朝、悪魔に身体を乗っ取られた。意識はあるのに、勝手に体が動き出していた。もう自分の身体ではなくなっていた。そして、馬に乗って急な崖に行って、そこから身と投げて転落した。痛さも何もなかった。

 瞬きすると、意識が壁から部屋を見ている形になった。そこにはダチュラというロベリアの擁護兵としていた男の姿がみえた。クロユリではない声で、『ナイフで、夜の間にオダマキの刺して殺せ』と言った。クロユリは意識はあるけど、自ら話すことはできなかった。ダチュラは朦朧として目がとろんとした様子で「はい」と答えていた。そして、ダチュラはオダマキを寝室に入り込み殺害している姿が、壁から見えた。

 また違う壁へと意識がいった。黒髪で後ろで髪を束ねた民族衣装に女性の姿があらわれた。

「トラディジーア王国のお嬢様のロベリアを殺さないと、一生、歩くことができない。これは悪魔との契約だ。」

 そう言って、また意識がなくなった。そして、「誰か助けて」と叫ぶロベリアの姿があらわれた。ロベリアが地下の階段を上がったところで意識を失って、身体が燃え盛っていく姿がコンクリートの壁から見ていた。

 悪魔とは二度と話すことはできず。ずっと、静まり返ったトラディジーア城の焼け落ちた城の壁から動くことがなかった。そして、いつまでも目の前に、焼け落ちたロベリアの骨だけがあった。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

悪魔がささやく 一色 サラ @Saku89make

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ