第2話 未来無き女子高生
「はぁ・・・」
「大丈夫?顔色悪いけど・・・希空」
「う、うん」
「私は、乃亜の事情は知ってるんだから。ちゃんと話してね」
「大丈夫だよ」
白夜高校に通う高校三年生。
得意教科は、全て。
苦手教科は、特にない。
だが、今更得意とか苦手とかどうでも良いのだ。
なんて言ったって・・・。
「5年か・・・」
私の残された時間は、たった5年。
残り5年しか生きることができないのだ。
医者からは、病名を伝えられていたがあまりのショックで忘れてしまった。
最早どうでも良いのだ。
不治の病。
それだけは分かっているのだから。
高校を卒業したら治療というか延命措置を受けるつもりではあるが、正直どうなるかは分からない。
病気だと気付いたのは、今年になってからだ。
時間をかければ、症状を抑えられていたのかもしれない。
でもこれは、私のわがままなのだ。
友人たちと一秒でも長く、高校生活を過ごしたかった。
「希空?本当に大丈夫?顔色悪いよ・・・」
「うん。大丈夫。今日は先に帰るね」
「う、うん・・・」
私は友人と別れ、帰路についた。
「将来か・・・。特に何にも無いなぁ」
将来に対して、何にも希望を持っていない。
友達とかは、彼氏とか居るみたいだけど、私は恋愛しては駄目だと思う。
誰かと恋人になってしまうと、相手には私の病気の事を教えないといけなくなるから。
「家に帰ろ・・・」
どこにも寄り道することなく、まっすぐ家に帰ることにした。
残りの寿命は、両親の為に使おうと決めているのだ。
「ただいま~」
「おかえり希空」
「うん」
家ではお母さんが出迎えてくれる。
残りの寿命を私と過ごすためだ。
父は、治療費の為に働いてくれている。
治る保証は無くても、少しでも長く私と過ごしたいという思いで働いている。
両親には感謝しかない。
さらには妹も一人いる。
歳は二つ下で、高校一年生。
彼女は、至って健康だ。
私とは違って自由に健康で長生きして欲しいと思っている。
「今日のご飯は、パスタよ」
「はーい」
私は着替えるために、部屋へ向かう。
部屋には、たくさんのぬいぐるみが飾ってある。
これでもファンシーグッズは好きで昔よく、ゲーセンで取ったものだ。
着替えを済ませた後には、薬を飲む。
あくまで症状を抑えるためだ。
たまに発熱したり、体がだるく動けなくなることがあるため、それらを抑えるためなのだ。
以前にも何度か気を失ったりしたことがあり、その度に両親にはとても心配させてしまった。
それもあり、母は仕事を辞め私の面倒を見てくれている。
「希空~。着替えたら降りてらっしゃーい」
「はーい」
お母さんが呼んでる。
何の用だろう・・・。
「はい。これ」
「これは?」
「いいから開けなさい」
「う、うん」
お母さんから、小包を渡された。
その中身を見るため、開けてみる。
すると中には、ネックレスが入っていた。
「綺麗・・・」
「これはね。お父さんが私にプレゼントしてくれたものと同じものなのよ。ほらっ」
お母さんは、首に着けているネックレスを見せてくる。
「家族でお揃いよ。美愛にもあげるつもりよ」
美愛とは、私の妹の名である。
両親は、私もよく面倒を見てくれているがちゃんと妹にも愛情を注いでいる。
自慢の両親なのだ。
「美愛も喜ぶと思うよ。お母さん」
「ふふっ。そうね。帰ってきたら渡さなきゃだね」
「うん!」
美愛は、放課後は寄り道して帰ってくるため今は家に居ない。
「あと、誕生日おめでとう。希空」
今日は私の誕生日だった。
言われて思い出した。
「あ、ありがとう」
「んー?まさか忘れてたの?」
「うん・・・」
「全く、あなたが産まれた日なのよ。私たち家族が愛してるあなたがね」
「・・・お母さん」
「ん?」
「ありがとう」
「うん!どういたしまして」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます