第二十四話 : 幽霊とデート②

目が覚めて冷凍ご飯を電子レンジでチンをする。

その間に水を火にかける。

お湯が沸いたタイミングでインスタントコーヒーをあらかじめ入れておいたコップに注ぐ。

冷蔵庫から味噌玉を取り出して、それにもお湯を注いで溶かす。

あとはチンしたご飯にふりかけをかければ完成だ。



「いただきます」



私は手を合わせて言った。

今日は特別な日。

人生で自分から異性をデートに誘ったことなんてなかった。元々異性とお付き合いをするという経験も乏しい。

告白されてOKを返して付き合ったことが数回あるだけなのだ。その人たちの事が好きかどうかもわからず一緒にいたが、なんか違うかなと思いさようならをした。

しかし今回は違う。『初めて』『明確に』私はこの人が好きだと感じている。

その好きになった相手が幽霊でなければこれからも一緒にいれたかもしれない。

けれど彼は幽霊。私が初めて恋した相手は『幽霊』。

そして彼は今晩天へと旅立つ。

その前になんとかデートをしたいと思い、昨日の夜に私からデートに誘ったのだ。

デートに誘うということがこんなにドキドキするものだとは思わなかった。

世の男性陣はこんなにドキドキしながら女性をデートに誘っていたのかと思うと純粋に尊敬してしまう。

昨日の事を思い出して少し恥ずかしくなりながらご飯と味噌汁をかき込む。

食器を流しに入れてからメイクに取り掛かる。

普段よりも気合いを入れてメイクをする。

なんたってデートなのだから思いっきり、可愛くして行きたい。

洋服も可愛いのを選ばないと!

普段はジーパンにゆるい感じのブラウスを合わせる事が多いが、今日は渾身のワンピースで行こう。花柄のお気に入りのやつだ。

■■さんも喜んでくれるだろうか。

可愛いなと思ってくれるだろうか。

デート前のワクワクするというのはこういうものだったのか。メイクにしても洋服にしてもどうしようかと悩むだけで楽しい。

こういうことは体験してみないとわからないものだと思いながら出掛ける準備を進める。

幽霊は呑気にソファで眠りこけている。

この光景を見るのも今日が最後。

幽霊なのにソファで寝ている奇妙な光景を明日から見ることが出来ないと思うと気持ちが落ちる。

だめだ!今日は楽しく!暗い気持ちに絶対ならない!泣かない!と思っていたのだった。

泣くなら明日思いっきり泣けばいい!今日は彼が楽しかったと思って天へ行けるように私も思いっきり楽しむ!

シャキッとするために自分の顔を両手で叩いた。

叩いたらメイクが少し崩れたので直してからソファの幽霊の方へ向かう。



「■■さん!起きてください!デートに出掛けますよ!」



彼はハッと目を開けて辺りを見回す。



「熊井さん。おはようございます。どこへ行くんですか?」



彼は寝ぼけ眼で私の方を見ている。



「お台場です!」



私は元気よく言った。

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