第二十話 : 幽霊とアニメ④
私は十五時ごろに目を覚まし少し遅めのお昼ご飯の準備をする。
幽霊はそんな私を嬉しそうに眺めている。
ただ目は早く続きを見ようと訴えかけているのもわかる。
「■■さん、続き見ますよ!」
お昼ご飯を机の上に並べ終えてDVDプレイヤーを操作しながら私は幽霊に話しかける。
嬉しそうに幽霊はテレビの方へ向く。
私も彼に倣ってテレビの方へ向いた。
「これで借りてきたやつは終わりですね」
彼はハッとした顔をして早口でアニメはDVD化するのに時間がかかる事やDVDボックスにはいろいろな特典映像、グッズが付いているという事を説明してくれた。
離しの半分はDVDボックスはすごいという話だったが彼が嬉しそうに話してるのを見るのは私も嬉しかった。
「どうしましょう?これでは最終回まで話が繋がらないですね」
彼の早口タイムが終わった後に私は彼に相談をする。
うーんと言いながら端から見ても悩んでいるという表情をしている彼はアニメのようで少し滑稽で可愛らしく面白かった。
少しすると彼がいきなりハッとしたのでおそらく何か浮かんだのだと察する。
「堀さんにDVDに焼いてもらうっていうのはどうでしょう?」
そう言えば彼も何かあれば言ってくれという旨を言っていたような気がする。
この幽霊ちょっと頭良いかもなと思った。
「あー!たしかに!ちょっと堀さんに連絡してみます!」
私はすぐさまスマートフォンを取り出し、昨日のアニメの続きをDVDに焼いて貸してくれないだろうかという内容の連絡をした。
連絡をして数分のうちにスマートフォンが鳴る。
レスポンスが早くてびっくりしたが彼はいつも反応が早い気がする。
気になる返信の内容は今日の夜のシフトに入る時に最終回の一個前までのを持ってきてくれるということだった。
「今日シフトの時に持ってきてくれるとのことです!これで最終回に間に合いそうですね!」
シフトの時間までは少し時間があったので食器の後片付けと洗い物を済ませ、少し幽霊と雑談をしてバイトに向かった。
「おはようございます」
私が着いた時はやはり堀さんはすでに出勤して来ており事務所にいた。
「熊井さん!おはようございます!昨日借りてったやつ全部見たんですか?!どうでした?面白かったですか?感動しますよね!熊井さんが言いたいことわかります!どのシーンがよかったですか?俺は……」
私が事務所に入った瞬間に駆け寄ってきた堀さんは質問攻めというかなんというかまるで私の家に住み着いてるあの幽霊の早口タイムのようなものを始めた。
こんな堀さんを今まで見たことない。
彼は無邪気な弟のような感じもありつつ冷静でロジカルな人だと思っていたのに今目の前にいる彼には全くそんな片鱗がなかった。
「あっ!そう言えば!熊井さんこれ!」
彼は自分の言いたいことが大方終わったのか唐突にバッグからDVDを出して私に渡してきた。
彼は約束通りDVDを持ってきてくれたのだ。
「ありがとうございます!助かりました!」
「そんな嬉しそうに言われるなんて思ってもみませんでした!正直な話、布教用に一組はいつでも貸せるようにしてたんです。前回熊井さんが借りる時に言おうかと思ったんですがちょっと間を空けちゃうと見る気持ちが下がったりするじゃないですか?そうなったら嫌だなって思って言わなかったんです。ごめんなさい!」
彼のこういう時に正直に言うのが無邪気な弟のようだと思う。人によって思うことは変わるだろうが私は結構そういうところに可愛いと感じてしまうタイプだ。
「いえいえ!貸して頂けるだけ有り難いです!またなんかあったら言いますね!」
彼は是非と言って仕事に向かって行った。
私も彼を追うようにお店へ出た。
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