第六話 : 幽霊の秘密②

「なんで■■さんは私に見えてるんですか?」



いろいろ考えたが回りくどい言い方をしても望む回答に辿り着くのは相当時間がかかりそうだと思った私は意を決して単刀直入に聞いてみることにした。

もしかしたら彼は死神で死期が近い人にやってくるのかもしれない。それならそう答えてくれるはずだ。私を恨んでいるなら恨んでると答えるかもしれない。



「いやぁなんでですかね!知らないと思うんですが昨日ちょっと認知されてるかの実験をあなたにさせて頂いたんですが、そのときは見えてなかったっぽいですよ!」



彼は快活に答える。

想定していた言い方も回答も全然違う。

昨日の時点では私にも彼が見えていなかった?

それなのに今日は見える?

一体どういう原理になっているんだろうか。

それに私は彼に突き飛ばされてトラックに轢かれるのを回避してる。

けれど彼はコップには触れない?

どういうことだ?



「いや!変な感じじゃなくて!変な意味じゃないでしゅ!」



彼は慌てたように早口で言う。

何に慌てているか全くわからないがすごく焦っているのがわかる。



「非常に情けない話なのですが」



彼はそう切り出すと自分の身の上の話を始めた。

彼は近所に住む大学生で現在就活中だったらしい。

だったというのは彼はなかなかうまくいかない中で将来に絶望して自殺を選んだらしい。そして幽霊になった。

幽霊になってから放浪している時に私を見かけ、そしてトラックに轢かれそうになった私を助けた。


私と少し境遇が似ている気がする。

将来に絶望して明日を考えられなくなってしまっている彼と私。

状況はすごく似ている。

彼は自ら終わらす覚悟があって私にはそれが無い。

それが大きな違いだろう。

彼は自殺という悲しい結末ではあったが、その悲しい結末は自分で勝ち取ったのだ。

私はそれすらも勝ち取れない。

彼と私には大きな差がある。埋めようのない大きな差が。

彼が自分の身の上を話した以上私も話さないといけないと思い自分の事を話した。

宮城県出身であること。歌手志望で十八歳の時に状況してきて未だまだくすぶってしまっているということ。もう諦めて実家に帰ろうと思っていること。



「死んだら救われましたか?楽になったんですか」



私は思わず聞いてしまう。

彼は自殺をして救われたのだろうか。

宮城に帰るとは言ったものの親に合わせる顔がない。いっそこのままこの人のように自ら……。

私の問いかけに彼は真剣に悩んでいた。

相変わらず彼の顔は絵の具を伸ばしたようでわからないがすごく仏頂面になって悩んでいるのがわかる。

もし彼が自殺したことを後悔していないのであるならばたぶんすぐにそう答えるだろう。

しかし彼はすごく悩んでいる。

ということは少し悔いがあるのかもしれない。



「せっかく幽霊さんになれたんですから■■さんは楽しまないとですね!」



彼をそんなに悩ませてしまった罪滅ぼしをするかのように私は少し元気よく言った。

彼はニコッと笑ったような感じがした。

その後彼は何やら考え込むような顔つきになる。

何を考えているのかさっぱり読めない。

正直彼の話を聞いて親近感を持ってしまってからは彼が悪い人間もとい悪い幽霊には思えない。

話してくれた内容は誠実そのものだし悪意は感じられない。

なによりもしかしたら何か一つ違えば幽霊になっていたのは彼ではなく私かもしれないということを考えると放っておくことはできなかった。



「■■……さん?大丈夫ですか?」



彼がずっと何か考えてるいるようだったので少し小さめな声で声をかけてみると彼はビクッとして私の方を向いた。

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