第4話 酩酊
私は、お酒を少しずつたくさん呑む。お酒が好きというよりは、美味しいものをたくさん食べるのが好きで、食べ物に合わせて飲むお酒も変える。今日は、最初にビールを呑んで、お刺身が出てきたら日本酒、今はお肉を食べているので赤ワインを飲んでいる。食事が続く間飲み続ける。料理がなくなった時点で飲酒も終わり。そんな飲み方を長年していると、いつの間にかお酒に強くなった。
それでも酔って気持ち悪くなるのは絶対に嫌なので、周りになんと言われようが、テーブルにデキャンタでミネラルウォーターを置いてもらい、水分補給をしながらお酒を楽しむことにしている。そんな私の前で山下は酔い潰れた。
お開きになったとき、山下と同じ方向なのが私だけだということが発覚し、元上司に酔っぱらいを託されてしまった。他の女の子は(男も)ベロベロになった山下と勝手にツーショット写真を撮ったり、握手をしたりした後、三々五々帰っていった。同じ方向と言っても、私はここからいくつか電車を乗り換えるし、文字通り方向が同じだけで近所なわけではない。とんだ貧乏くじを引いた。
駅まで歩けそうになかったら、タクシーに放り込んでやろう。お金は持ってるだろうし。そもそも、私は酔っぱらいの介抱なんてしたことないんだ。初対面でかなり迷惑な奴だ。そんな私の思いが良くも悪くも届いたのだろう、山下は歩道でへたりこんで動かなくなってしまった。
「ちょっと、あんたいい加減にしなさいよ。」
言い終わる前に、私の目の前で山下は吐き散らかし始めた。こうなってしまうと、道行く人誰一人山下には気づかず、むしろ迷惑そうな顔で距離をとって通りすぎていく。
「全く、見苦しい」
一段落してベンチに座り肩で息をしている山下に、自販機で買ったお茶を渡した。ゆっくり飲みながら、謝っている。
「それ、返さなくていいから、家で捨てて。」
貸してあげたハンカチは無惨な程に汚くなっていた。
予定どおり、山下をタクシーに押し込み、私は一人で電車に乗った。とんでもない飲み会だった。今度から誘われても二つ返事で参加せずにメンツを確認する必要がある。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます