第28呪 神殿の聖母像は呪われている💀
「ウルトラルティメット、パアアアアァァァァァンチ!!!!」
ドゴオオオオオォォォォォォン!!!
キャプテンアイパッチをつけてから、さらに4日が過ぎていた。
ここまでに回ってきたダンジョンの数は――ユウマが面倒くさがって20を超えたあたりから数えるのを辞めてしまったが、とっくに50件を超えていた。
都内にあるダンジョンというダンジョンを、企業案件も放置ダンジョンも問わず、片っ端からブレイクしまくっている。
ダンジョン無くなっちゃうんじゃない? と思われるかもしれないが、どんどん新しいダンジョンが産まれているので心配するには及ばない。
にもかかわらず、いまだに目的のアイテムは見つからない。
それもそのはず。
これまで世界中で発見された数でさえ5つしかない、
いまユウマは、広大な墳墓型ダンジョンに5つ目のトンネルを作ったところだ。
キャプテンアイパッチのおかげでボスを見つけるスピードが上がったのは運がよかった。
「そおぉ、こおぉ、かあぁ!?」
真っ黒なマントに身を包んだボス、骨マント(未発見モンスターにつき正式名称無し)をストレートで粉砕する。
ドロップアイテムはユウマが欲しいもの……ではなく、明らかにナイドラが好むタイプのロングコートだった。
簡易鑑定眼鏡を使うがアイテム名は【???】となって表示されない。
この簡易鑑定眼鏡は、過去にダンジョンで発見されているアイテムのデータを画像検索する仕組みのため、未発見アイテムはこのように表示される。
〔 それ、装備―― 〕
ナイドラが装備の指示をする前に、すでにユウマはロングコートに袖を通していた。
〔 貴様も分かってきたな 〕
「こんだけ一緒にダンジョン回ってりゃな」
〔 うむ。良い、良いぞ! あとは足元だな 〕
ナイドラの言う通り、すでに足元を除いた全ての装備箇所が中二病装備で埋まっていた。
「このロングコート、未発見で名前がないみたいだな」
〔 ならば、我が名付けてやろう 〕
「え? ヤダよ。絶対ダサい名前つけるじゃん」
〔 そうだな。
「聞いてねぇし。宵闇とかガチで中二クサいし。まぁ、なんでもいいか、装備品の名前なんて」
💀ユウマの装備
武:邪竜のグローブ 攻撃力9999
頭:コバルトバンダナ 防御力???
胴:宵闇の衣 防御力???
腕:ミイラ王の包帯 防御力???
脚:レザーレッグカバー 防御力10
飾:キャプテンアイパッチ なんか視力が良くなった
拾った装備の防御力が全然分からないから強くなっているのかどうかもサッパリだが、見た目のインパクトだけは確実に強くなっている。
紅茶プリンの長髪にコバルトブルーのバンダナを巻き、黒いドクロデザインの
客観的な感想は「コスプレはイベント会場でお願いします」だな、と思いながらユウマとナイドラは次のダンジョンへと向かう。
「ウルティメットパーーーーンチ!!」
〔 いやいや。さっきの『ウルトラルティメット』は見逃してやったが、『ウルティメット』はさすがに省略しすぎじゃないか…… 〕
「もう何回も言うのしんどいんだよ」
〔 我が徹夜で考えた超カッコいい技名をだな―― 〕
「わかった、わかった。あ! ボスだぞ。ウルティマパンチ!!」
〔 それじゃもう……意味も違うではないか 〕
次も、その次も、更にその次も、目的のアイテムを見つけることは出来なかった。
その代わり、いや代わりにはならないのだが、ナイドラ好みの脚装備がドロップした。
簡易鑑定眼鏡
アイテム名【拘束ブーツ】
怪しい名前だがなんということは無い。
ただ、これでもかというくらいベルトが巻かれた焦げ茶色のロングブーツ。
それだけである。
こうしてキッチリ中二病装備に身を包んだユウマは、さらにダンジョンのハシゴを続けた。
「なんだ、ここ……。ダンジョンというか、ちょっと荘厳な雰囲気というか」
そこは言うなれば神殿型のダンジョンだった。
神殿の外に広がる庭園には、四季折々の花が同時に咲き乱れていて「ここが天国ですよ」と言われたら素直に納得してしまいそうな説得力があった。
〔 濃いな 〕
「濃いって……なにが?」
〔 魔素だ。これまでのダンジョンの10倍、いや20倍ほど濃い 〕
「魔素が濃いとどうなるのさ」
〔 単純にモンスターが強くなる。魔素はモンスターの栄養だからな 〕
「なるほど? そもそもモンスターが出てこないわけだがな」
〔 それから―― 〕
「ごめん、ナイドラ。ボスみたいだ」
神殿の奥には祭壇があった。
その祭壇の前に、聖母のような佇まいで立っている純白で巨大な石像。
ユウマはその石像と目が合ってしまった。
「侵入者をはい――」
「ウルティメットパンチ!!」
「じょぶほぁ――ッ」
先手必勝。
ユウマは聖母像の顔面にウルトラアルティメットパンチを叩きこむ。
しかし聖母像は砕けることなく、ユウマを睨み返した。
攻撃力が9999もある『邪龍のグローブ』がワンパンで倒せなかった敵は初めてだ。
(こいつ……堅いな)
〔 ふん。ここにモンスターがいない分、こいつが魔素をひとり占めして力を貯めていたのだろう。だが、大したことはない 〕
「おのれぇ、ひきょ――」
「ヘブンストロイブレス!!」
「うもあっつぁぁぁぁぁ――ッ」
邪龍のブレスが聖母像の足元から焼く。
(なんか火あぶりの刑みたいな絵面だな)
「きさま、ゆるさんぞ――ッ」
「許す気なんか最初からないくせに、よく言うよ」
純白だった聖母像の色が、みるみるうちに黒く染まっていく。
ユウマはノワールサイクロプスを思い出して――さっさとボコボコにしようと決意した。
「ここがきさ――」
「ウルティメットパンチ!!」
「まのはかぶへぁ――ッ」
ユウマは聖母像に喋るヒマも与えず、ただただパンチを当て続ける。
50発ほど打ち込んだところで、聖母像は粉々になって砕け、そのままサラサラと消えていった。
「結局、あいつなんて言ってたんだ?」
〔 さぁ、な 〕
聖母像が消えた後にドロップしたのは、小さな小瓶だった。
中には虹色に光る液体が入っている。
「これは……もしかして」
簡易鑑定眼鏡
アイテム名【
「おおおおぉぉぉぉっしゃああああぁぁぁぁ、おらあああぁぁぁぁ」
ついに目的のアイテムを見つけたユウマは、雄叫びを上げた。
ダンジョンがブレイクして、外に出たときには外には朝陽が登ってきていた。
時間はもうほとんど残っていない。
――――――――――――――――――――
💀魔素が濃いダンジョン
ナイドラが説明していましたが、魔素はモンスターの栄養となるので魔素が濃いダンジョンでは生息しているモンスターやボスが強くなります。
そして、ナイドラが「それから」と言いかけていたのはドロップアイテムのレアリティが高くなる、ということです。
モンスターがドロップするアイテムは、モンスターの体内に蓄積していた魔素が物質化したものです。
それは繊維や金属のような固体化したものもあれば、霊薬のように液体化しているものもあります。
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