家に帰ると…

 いつものように玄関の前で鍵を開けて扉を開ける。

 靴を脱いで、廊下を抜けるとどうやら誰かが来ているようだ。


「あれ、父さん来てたんだ?」


「近くを通りかかったからね。」


 あまりにも自然に父が目の前にいる。

 小学生の頃に亡くなった筈の父は生きていたらしい。

 子供の頃はあまり仲良くなかったから、今なら仲良く出来るかもしれないし嬉しいな。


 いや、考えてみるとあまりにも違和感がある。


 久しぶりに父さんに会えたことは嬉しい。

 しかし、葬式に出たことは覚えているし父が亡くなってから引っ越ししたことも覚えている。

 父さんと私はどうやら会話をしているが、ぐるぐると考えがよぎって会話の内容が頭に入ってこない。

 父さんは会話をしながらも初めてみるリビングを物珍しげに見回している。

 話したかったこともたくさんある筈なのに、それ以上に父さんが生きていたことによる戸籍の問題などが心配になる。

 いや、やはり父さんは亡くなっているはず。。


 伝えようか迷う、父さんが既に亡くなっていることを。

 伝えたら父さんはまた居なくなってしまう気がしている。

 ああ、これからどうしようか。

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