第12話 通夜にて……。

《〇〇は……頑張ってくれた

から、病気でしんどいでしょう?


通夜は仕方ないから、葬式には

顔を出せれるよね?》



《うん!!ごめんなさい。》


通夜は仕方ないから。



そう……。私はいつ発作が

起こるか、わからないので……



通夜は欠席した。身内なのに。



家で……ぼけ~~~としていると


長男と次男が……喪服姿に

早変わりしていた……。


私が……葬儀会場で発作を

起こすであろう。と、皆が


思ったのだろう。


お兄ちゃんも、お兄ちゃんの

奥さんも、東京から


飛んで来た。



通夜には……特養のスタッフさんも、みえたそうです。


特養のスタッフさんが


《勢津子さん!!!勢津子さん!!!》


と……大泣きしていたそうです。


この優しいスタッフさんは、

せっちゃんが……緊急入院した

時も、



救急病棟に、足を運んでくれたそうで。


まるで、自分の家族が

亡くなったかの様に泣いていた。



長男と次男は……せっちゃんの

妹さんと、世間話をしていた

そうです。


家族葬。暖かな心尽くしで

始まった。


長男と次男は……通夜がすむと

お兄ちゃんに自宅まで


送ってもらいました。


《明日は……朝8時過ぎな!!

  また迎えに来るから。

〇〇?大丈夫か?!じゃな。》



次の日……葬儀会場へみんなで

着いた時、


せっちゃんは棺の中で

安らかな顔をしていた。


葬儀が始まった。



お坊さんが……お経を唱える。


私は……ぼんやりとお経に

聞き入っていた。


嘘をつくべからず。

想いを断ち切る。

いくつかの門をくぐる。



ちょっと難しいお経を、お坊さんは……唱えていた。


霊魂になって、初めて修行を

積むんだね?

と……ぼけ~~としていた。



母親の法名は決まっていた。


その中で……正室という

言葉が入っていた……。


お兄ちゃんが……


《正室とか側室とか?あるよな。》

私は……えええ??!


《お父さんて、側室持ち??!》


えええ??!


真実は、うやむやにされた。

まぁ、浮気なんてクズがやるこった。


お父さんに側室がいたら

ちょっと考えちゃう。うーん。



お経が終わると……今度は


出棺だ。長男と次男それと

私は……家で留守番になった。



また、これも色々と……配慮が

あるのだろう。



お姉ちゃんが霊柩車の助手席に

座り、お兄ちゃんと奥さんが


いそいそと用意する。


棺には……みんなが1本1本

入れていった花がせっちゃんを


埋め尽くしていた。




出棺を、見送ると……


葬儀会場に、タクシーを手配して

もらった。



寒空の中で……葬儀会場のスタッフさんは、温かいお茶を

用意して下さった。



お茶をいただいてると……


タクシーが来た。

長男と次男、私と乗り込むと



ようやく、自宅に戻れたのだ



《お姉ちゃん達、大丈夫かな?》


《母さんよか、しっかりしとるで大丈夫やろ??!笑》


《あんた達も、ありがとう。

ホントにごめんね?》


《俺らのばあちゃんだから

当たり前やろ?》


次男は……次の日から仕事だ。




せっちゃん。


11月19日……天国へ。



時間は、昼過ぎの日差しが

うららかな日であった。

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