一億光年離れた手のひら

よちまる

永遠の道導

第1話 最高の友

 ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ


「う〜〜ん、、、もうそんな時間か〜」


 今日も今日とてこの音で起きてしまった、みんな大好きケータイのアラームだ、これに嫌悪感を持っている人も少なくないだろう。

 慣れた手つきでアラームを止めようとした彼は大学3年生の如月永遠きさらぎとわ、すでに就活を終えて残りの大学生活をゆったり過ごすのみとなっている。


「ん〜〜〜あれ? まだ6時…設定は7時なのに…って事は?」


 そう、隣の部屋のアラームで起きてしまった、立地条件がよくてここに決めたが防音効果が弱いのは考慮してなかった。


「まあいいや、あと1時間寝るか」


…………


「だめだこれ」


 10分ほど粘ったが眠りにつける気がしない、自分のアラームで起きた時は3時間は寝れるのに他の要因で起きた時は何故か寝れない。


「うーん、たまには早起きするのもいいか」


 そうして寝る事を諦めて滅多に食べない朝食を準備する事にした。


「インスタントのスープでも飲もうかな」


 お湯を沸かしている間にテレビを付けた。


〜〜〜 〜〜〜


「それでは続いてのニュースです……この度日本は世界でテロリストが多発している事を危惧して銃の所持を認めるとしました」


「ついに動きましたけどこれに関して杉さんはどう思われますか?」


「そうですね、まずは物騒な世の中になった、なってしまったと言うべきでしょうね……」


〜〜〜 〜〜〜


「はは、マジかよ、てか持たした所で変わらんくね? 誰が扱えるん? 許可したけ後は頑張って自衛して下さいってか? テロ相手に? おもろ」


 チャンネルを変えても全部同じニュースが報道されていた、重要な事だから当然と言えば当然なのかな。


 その後はただご飯を食べて時間が来るまでスマホゲームで時間を潰し8時に家を出た。今日も愛車に乗って大学へ向かう。


「あー眠い、しっかり目が覚めたつもりやったけど1時間早く起きた反動がもう来たわ」


 今日もいつもと同じ道を進んで行く、幸運な事に今日は何故か車が少ない、これだと無駄に早く着いてしまう。コンビニに寄るかどうか迷っていたら、見慣れた後ろ姿の女性が歩いていた。


「おはよ〜乗る?」


「ん? 永遠とわじゃん、おはよ……歩くの怠いけど別に急いでないしなぁ」


「まあいいやろ、乗りな」


 Janelleジャネルの腕時計を身につけた彼女は同じサークルの同級生篠宮若菜しのみやわかな、ゆったりした口調でよく喋る。


少しふわふわな彼女を助手席に乗せて走り出した。


「朝のニュース見た?」


永遠とわがニュース見るなんて珍しいじゃん、だからあんなに不吉だったんだね」


「そんな日もあるやろ」


「お試し期間みたいな感じで言ってたけどそれはそれでよく分からないよねぇ、ここだけって」


「ここだけ? 東京だけなん?」


「そう言ってたよ〜」


「そうなん、ちょっとそこまで見とらんやった、チャンネル変えても同じ事しか言っとらんし見るのやめた」


「ふーん、寝るから着いたら起こしてぇ」


「あー了解」


 そう言って若菜わかなはすぐに眠りについた、と言っても10分ほどで大学に着いた。


「着いたよ」


「ん」


若菜わかなはこの後どうするん」


「時間までいつもの所で寝る、昼過ぎでも居なかったら起こしに来て」


「分かった、てか若菜さ、昨日あれからほんとに髪切りに行ったんやね、あんだけ怠い怠い言っとったのに」


「うん、気付いたらもう切り終わってたよ〜」


「やばすぎw じゃあ後でね」


「ん」


 2人はそれぞれ別の方向に歩き出した。


「やっぱり腹減った、9時までは…あと30分だから適当に学食の自販機でパンでも買うか」


そして30分後〜〜〜


「あいつはまだ来とらんのか? 一体どこをほっつき歩いてるのか」


「寝てるんじゃないですか?」


「ちょっと電話するから先に準備しといてくれ」


「分かりました〜」


「はいもしもしどうかしました?」


「どうかしたってこっちのセリフや、お前今どこにおるんや」


「あーちょっと渋滞に捕まって遅れました、今ちょうど着いてそっち向かってるんであと5分ぐらいで着きますよ」


「おう、それじゃあ早く来てくれよ」


「分かりました、余裕っす」


…………


「はぁ……あと5分ぐらいで来るらしい、15分はかかりそうやな」


「ですね」


 島崎しまさき先生が電話をかけた時、永遠とわはまだ学食にいた。

 少し腹ごしらえをして座っているうちに睡魔に襲われた。少し仮眠しよう……そう思った。


「1時間早く起きたのに寝坊したわ」


 その結果がこれである。


「申し訳ねぇな」


永遠とわじゃねぇか、お前今日は島さんとこの手伝いに来たんじゃなかったのか? 9時からって言ってなかった?」


 後ろから元気な声が聞こえて来る、まっ金金に染めた髪が眩い彼は神坂智理こうさかともり、入学して最初に出来た友達、そして今のサークルに誘われた。


「今から今から、さっき電話であと5分で着くって言ったけ全然余裕」


「なるほどね、ちなみにその電話は何分前にしたやつ?」


「えっとね…3分前」


「早く行けよ」


「おう、行く行く」


 そう言って荷物を持ち歩き出した、少し寝ぼけているのかおぼつかない足取りで向かう。


「そうだ、のぞみに一応言っててくれないか? 今日の夜はいつもの居酒屋って、あいつすぐ忘れるからさ」


「了解、じゃあまた後で」


 智理ともりと別れて永遠とわは先生の元は向かった、途中お腹が痛くなった様に感じてトイレに行ったりしてなんやかんや20分ぐらいかかった。今日はゲンコツ一発で許してもらった、機嫌が良くて助かった。


 その後はちゃんと島先生と同じサークルののぞみの手伝いをした、昼から若菜わかなも加わり順調に事が進んだ。もう陽が落ちる時刻になっていた。


「いやー助かったよ皆、今日はもう大丈夫だ、この後は帰るだけか?」


「これから4人で居酒屋に行きますよ〜」


「4人と言うと、あとは神坂こうさかか」


「そうですねぇ」


「この時期に呑気に飲み行ってあいつは卒業出来るのか?」


「どうですかねぇ」


 2人が談笑している時にのぞみの電話が鳴った。


智理ともりからね、もしもし、うん分かった…正門の所で待ってるんだって、行きましょ」


「お、ありがとな3人とも、また明日も頼むよ」


 3人は会釈をして部屋を出た。


「ねえ永遠とわ〜、車どうすんの?」


「置いてく」


「よくあんな高級車置いてこうと思うわね、流石金持ち君」


「兄貴が凄いだけで俺はなんもやっとらんよ」


「まあなんだかんだあんたが車持ってて色々助かったけどね」


「やろ? 兄貴に感謝せなね」


「まあそんな事より早く行こうよ、今日はそれだけが楽しみだったから、行くよ若菜わかな!」


 若菜わかなの手を引っ張り走り颯爽と走り去って行った。


「おい室内で走るなって…楽しそうでなによりやな」


 その後智理ともりと合流していつもの場所へ向かった、週末でかなり人が多かったが智理ともりの秘儀、顔パスで普通に入れた。


「それじゃあカンパーイ!」


 号令と共に智理ともりは一気に飲み干した。


「やっぱ最高だね〜」


「あんた飲み過ぎないでよね、明日も朝から島先生の手伝いあるんだから」


「大丈夫だって、それより今日が大学最後の飲み会になるかもしれんないんだから派手に行こうぜ!」


「そだねー、これから忙しくて中々会えなくなるだろうし、それにともりんは卒業すら怪しいしね〜」


「それは別にいいんだよそれは、それよりも永遠とわの方が厳しいスケジュールだろ?」


「まあ色々提出する物あるしね」


「確か知り合いの会社に行くんでしょ?」


「うん、それも兄貴のおかげだけどね、面接も何もなかったし」


「でもその代わりエグい量の課題みたいなのあるでしょ?」


「うん、だから明日の昼からしばらく家で引きこもりかな、朝に車取りに行くからそれ以降しばらく会えんね」


「大変だよね〜、課題の内容軽く見せてもらった時私吐き気したもん」


「こっちに来て色々な事挑戦して頑張ってるのはいいけど体壊さないようにね」


「うん、ありがと、3人にはほんと世話にやった、特に智理ともりはサークルに誘ってくれたおかげで今があるし」


「それは私たちも同じよ、私と若菜わかなだけじゃいいもの書けなかったし」


「うん、永遠とわの頭の良さと馬鹿さがいい感じにマッチしててよかった」


 3人でいい感じに思いにふけていると。


修斗しゅうと! 注文お願い!」


「はぁーい! 少々お待ちくださいぁ〜い!」


 希は手を振りながら店員を呼んだ、彼は倉光修斗くらみつしゅうと、朝から晩まで大学かバイトの真面目ボーイ、高校の頃にラグビーをやっており一時期引越しバイトを極めていたので、コミケの時にはよく手伝ってもらっていた。


「うわ、あんた飲むの早すぎ…ってかいつの間に2杯飲んでたの!? じゃあつぎは3杯目? なんか今日も潰れそうね」


「まぁさっき行った通り今日が大学最後になるかもしれんけ2人もガンガン飲もうや」


「お待たせ、マジずるいわ4人だけで飲むとか、俺も混ぜてーや」


「また今度行こうや、久しぶりに永遠とわと3人で! あっと注文注文〜俺は生中を!」


「俺はハイボール1つ、あとホッケと鳥の唐揚げを2で」


 早いペースで酒が進む4人、注意する様に言ったが結局智理ともり潰れる寸前までこの飲み会は続いた。

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