第2話

 居酒屋を探した。腹を満たすことを思って歩いた。定期的に金が入る情報も欲しかった。


 何の店かをイメージできるロゴが、目印として頼りだった。


 値が張りそうな店、お洒落な店、閉った店ばかりだった。それぞれ違う理由から、入店が出来なかった。


 街の外れの方へと歩いていた。


 その途中、賑やかな店が見えた。遠目に、飲食する陰があった。酒場らしかった。


 私は店の中に入って行った。


 そこは、オレンジの光で照って、温かい世界だった。テーブル席だけ、間が仕切られず、たくさんあった。人やモノが机の数ほど座っていた。


 

 他がするのに倣って、私も空いていた席へ座った。木の椅子には背もたれがあるが、ゆったりとできるほどの心の余裕がなかった。


「お品書きはこちらです。お客様」


 と、女の声がした。


 気がつけば、店員が立っていた。木の机の上に乗ったお品書きを、手で指していた。それが元から備わっていたことを私は知っていた。


 店員の親切だと思った。


 私はお辞儀した。


「ところで、当店は飲食のために、お金を使います。お財布のほど、きちんと足りるかをお確かめください」


 私は、どぎまぎとした。


 反して体はスッと動いた。手の中の一枚を店員に見せた。


 その店員は驚いた様子だった。


「大変失礼しました」


 と礼をし、


「ご注文の際には、手をあげて下さい。すぐに伺います」


 と続けて、そして帰っていく。


 私は周りを見てみた。大半がモノであるが、モノにも種類があるようだった。ウェイトレスも各々、種族か、分類かが違うよう見えた。


 人間担当が彼女なのだろう。


 美人だった。ただこの酒場にあの敬語は合ってない気がする。

 

 私がお品書きの方へ向き、取って見ると、そこは知らない文字ばかりであった。しかし、意味がぼんやりと分る。これが誰かのカードの力だ、と思った。


 何を食べるか決めた。彼女を呼んで、注文をする。


 食事を待っている間、飛びかう会話を聞いていた。


 仕事の話だった。仕事相手の話もあった。働く人は結構いるようであった。よくよく考えると、皆同じ境遇から始まるのだから、その人達に向けた何かがあっていいはずだ、と思った。


 ウェイトレスが、焼いた鶏肉の大きいのを持ってきた。白飯もあった。私はがっついて食べた。


 噛みついて、咀嚼して、味がしみ出るのを感じながら、役場へ行こう、と決める。さっきの会話中、そのことが出ていた。


 食べ終えた。それから会計する。店員が値段を言った。私は最後まで、店員に働き口を尋ねることが出来なかった。


 私は店の外へ出る。冷たい風に当った。


 何にせよ、自分の力が解らないことには、雇ってくれないのでは、と思った。

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