第1話
繁華街にやって来た。色とりどり、点灯された通りだった。
ここも石で出来ていた。私は、古めかしく大きいものをかんじた。ここを行き交うモノ達が気がかりである。
あるモノは穴が四つの仮面にたてがみがあって、槍を持った。別のモノは太い骨で出来ていた。次へ目を移すと、体が溶けたモノもいる。人間もいる。彼等、彼女等は驚いてなかった。だから、危なくはないだろうと思った。ただモノを避けて歩くようにした。
丁度よく水瓶があった。
私はそこへ行って、覗きこんだ。
水の中で魚が泳いだ。
水面に、私の顔があった。人間の顔だった。男であった。黒い髪が短い。なぜか、私はその全てに安心した。
水瓶の魚を品として出していたモノに怒られた。そいつは私の半身くらいの背に、人と似た形で、あぐらを蓙の上でかいて、商売中だった。
私はボロで無地のシャツにズボンである。全身を覆うマントはある。フードつきである。しかし、前のめりになって、隙間が出来、貧しさが透けたので、商人は罵った。少し破れた靴へ目を付けてあった、と気づいた。
周りは羽織が良いようだった。そのことに人もモノも関係がなかった。商人のモノの衣も、周りを見た時の誰のをも含めて、そう感じる。もしかすると、この繁華街が特別にそうなのかも、と勘ぐった。
私は動きだそうとした。
その時だった。
遠くで、大きな声がした。
耳が立った。どうやら盗難であるらしかった。その犯人が、こちらへ逃げてきていると分った。
私は、犯人をどうにか捕まえられないかと考えだした。そうすれば、いくらか金が貰える、と思った。
さっそく道のまん中あたりへ行って出た。両手と両足を大きく開く。ちらほらと人、モノが観てくる。生きるため、必死に集中した。
間もなく、犯人らしきモノが滑ってくる。そいつはジェル状の何かだった。
どう捕まえていいか解らなかった。私はとりあえず、腰を低くした。抱くようにしようとした。
すると、ジェル状のモノが止った。やり方がよかったのかも知れない。
私は、それがへどろであることを見て、一瞬抱きつくのをためらった。その一瞬、へどろは何かを投げてくる。
それが、宙に浮く内から、何なのか判った。
それは金だった。この繁華街で、取り引きされているのを見て知っていた。
私は、両手でそれを受けとめた。居直りながら、指を広げると、手中で、それは金色に光った。
もう、へどろはいなかった。
やって来た追い人が、私の顔面を一発殴った。それから、追い人はへどろを追って去っていった。
私は倒れながら、倒れてからも、金だけは放すまいとした。
少し経って、私はまたよろよろと立ち上った。
何を買おうか思った。繁華街だから、何でもある、とおもえた。
私を見る生き物は、もうなかった。皆、何事もなかったように日常へ戻っていた。
繁華街を見る私の目だけ、変っていた。
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