Horror World

プロローグ

 石で作られた街だった。


 所々、街灯があった。


 道に車等走ってない夜だった。夜だから、通りが悪いのか、知らないが、妙な形の陰にたびたび擦れ違った。


 歩いていると、向うで誰かが倒れた。それが何であるか、暗さではっきりしないが、道のさきから来ていたことはみていたので、人間である、と思った。


 私の目の前で、その倒れた人の体から、ほつれた毛糸がほぐれるように花が開いた。花はだんだん白く光り、陰が少なくなる分育っていき、そして、散ることと咲くことを繰り返している。


 それが死だということを、私はさっき老婆から聞いた。


 老婆もさっき同じようになった。私は良いものを見たように思った。遠くのもののように思った。


 生れたばかり、と老婆は言った。半日ほど前、気がつけば塔の上にいて、何もかも覚えてない私に言った。この世のモノは皆そうやって生れて、生れた時そのように感じる、とも老婆が言った。


 だから、私には金がなかった。腹も空いた。それでも歩いていたのは、老婆の話が私を連れてきたからだった。


『皆、力を持ったカードを一枚、持って生まれる。何の力か、当人は分る』


 私にはよく解らなかった。歩いていれば、いつか解る気が、私をここまで来させていた。


 ふと、陰たちが仲間に映った。


 私はどこへでもなしに、よろよろと歩き始めた。

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