第3話 若くて髪の長い女性
火曜日、桃花はいつものようにルークスに寄った。
「いらっしゃいませ」
今日は、バイトのお姉さんが休みのようで、
店長の三沢純が自ら接客した。
桃花は笑顔で微笑みを返し、
「生チョコモンブランとダージリンティ」
と注文した。
桃花はスマホを取り出し、
LINEアプリを開いて、召使の瀬能に連絡をとった。
瀬能はルークスの前に公用車のプレジデントを横付けし、
厨房の内部や皿を運んでくる三沢純がよく映るよう、
ズームで店内を撮影した。
「ごちそうさまでした。
それではチョコ生ショートケーキ5つと、
苺ロール6つ、さつまいものモンブラン7つに
ミルフィーユ6つ、テイクアウトで」
「ありがとうございます。
いつもご来店していただいているうえに、
たくさんのケーキをご購入いただきまして・・・」
「とても美味しくいただいております」
三沢純は、ほとんど毎日店に立ち寄ってくれる
若くて髪の長い女性、と桃花のことを認識していた。
三沢純は夜11時に帰宅した。
手洗いうがいを済ませてからすぐにシャワーを浴び、
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出すと、
頭をタオルで拭きながらゴクゴク飲んだ。
パティシエとしての勉強をしよう、と
他のパティスリーの様子を見るためにPCを開け、
YouTubeで「パティスリー」と検索をかけた。
すると、見覚えのあるサムネイルが目に飛び込んだ。
「これ、僕の店じゃないか!」
三沢純の店、ルークスの外観だ。
「アカウント名は・・・
『推し活@ルークス』さんか。
ルークスを応援してくれているアカウントだ」
店内が映っているサムネイルも見つけた。
「この映像は・・・
2番テーブルから撮影されたのかもしれない」
2番テーブル・・・いつも2番テーブルに座って
ケーキを食べてからテイクアウトをして帰る、
若くて髪の長い女性を思い浮かべた。
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