王宮の依頼・再び
ジェーン姉様の証言と回収した潜水服に残っていた記録を見てみると、姉様がサメに襲われたのは確かなようだ。
姉様は交戦したが、まずホースが邪魔になったので切り離した。切り離し機能は教えていなかったはずだが、姉様は野生の動物めいた鋭い勘で切り離しスイッチを見つけて押し、ホースを外したらしい。
だがそれでもまだ満足に動けないと判断した姉様は、潜水服を脱ぎ捨てた。
そしてサメを羽交い締めにした挙げ句鯖折りにし、殺してしまったとか。
ついでに怪しい赤い石を発見したので、それを回収しつつ海面に浮上したようだ。
やはり、この姉が死ぬ光景を想像できない。
なお、姉様が回収した赤い石だが。
『微弱な魔力が検出されました。魔道具である可能性が高いのですが、何の魔道具かはわかりません』
というマリーの報告があったので、要塞の守備隊長には簡単な報告を行い、王都にある鑑定機関に持って行った。
数日後に結果が出たが、そこには驚くべき事が書かれていた。
なんでも、赤い石の魔道具は専用の信号を送ることで発動し、魔物を凶暴化させた上で集めてしまう危険な魔道具らしい。
さらに副作用として、受信用の魔力を発することによって周囲の動物を攻撃的にさせてしまうらしい。
ジェーン姉様が抱えてきたサメを解体したら胃に内容物が入っていたし、電撃を受けても逃げることがなかったのもこの魔道具が原因だったのだ。
さらにこの魔道具はレリジオ教国の前身『ロマナム帝国』時代に開発された物らしいので、これを投下した不審船はレリジオ教国の船であることがほぼ確定した。
もしこの魔道具を放置していれば、凶暴な魔物を呼び寄せてアングリア王国軍に大損害を与えていたかもしれない。
そう考えると、早い内に回収できて良かったと思っている。
ちなみに、あの赤い石の魔道具は厳重に封印した上で国によって保管されるらしい。
一応、信号の受信距離で言えば魔道具が発動することはほぼ無いのだが、念には念を入れるようだ。
ある日、王宮に呼び出された。
そこで軍務大臣であるクリーバリー侯爵にこう言われた。
「すまないが、要塞にある人物を送って欲しいんだ」
「ええ、構いませんけど」
あまりやってこなかったが、へーゲル号は旅客業務も十分にこなせるポテンシャルを持っている。
なので、やろうと思えば出来なくはなかった。
「それで、どなたをどちらまでお送りすれば?」
「要塞だ。王都との往復になる。主要な人物は一人だが、護衛や側近、使用人も一緒に同行する。まぁ、その辺りは船の収容可能人数に合わせるから心配ない」
かなり高貴で重要な地位に就いている人物を乗せるらしい。
「つまり、各要塞への視察と激励に向かう、というわけですか?」
「そうだ」
冬に入り始めたこの時期、アングリア王国は当面の目標であったレリジオ教国の要塞全ての奪取に成功していた。
これからレリジオ教国への攻撃が本格的に始まるので、そのために一度激励を行いたいのだろう。
「それで、どなたを船にお乗せするのでしょうか?」
「それは――」
へーゲル号に乗船する人の名前を聞いて、びっくりした。
授かり物を持っているわけだし、いつかは対面するだろうとは思っていたけど、こんな形で会うことになるとは想像していなかった。
まぁでも、決まったからには準備が必要だ。
食料などの買い出しはメアリーとエリオットに任せておき、僕はその人を迎え入れるためへーゲル号の強化に取り組む。
まずはスイートルームを追加。船長室と同じくらい広く豪華な部屋だ。
3層目が無ければ装備出来ない。これをMAXの3部屋一気に追加する。
合計14000ポイント。
次に大浴場を設置する。30メートル以上の船体が設置条件で、5000ポイントかかった。
ちなみに、大浴場を設置すると船長室とスイートルームの浴室に湯船が追加される。
バーも設置した。マストが3本以上あり食堂の拡張を終えていることが条件だ。
3000ポイントが必要だが、長期間の航海中に溜まるストレスの軽減に役立つ。
さらに遊技室も追加だ。ビリヤード、ダーツ、各種テーブルゲームを楽しむことが出来る。
バーだけではストレス軽減に限度があるし、酒の飲み過ぎはどうかと思うので設置することにした。
3層以上、マスト3本以上必要で、4000ポイントを支払う。
最後に洗濯室を設置した。
文字通り洗濯機がたくさんあり、洗剤や柔軟剤、漂白剤を多数取り揃えている。アイロンや服の補修も出来る。
さらに、ドライクリーニングといった特殊な洗濯も可能だ。
船体が3層以上必要で、5000ポイントも掛かるが、清潔に船旅を過ごして貰うには必須だと思う。
これで、今できるお迎えの準備は全てやった。
後は、失礼がないように礼儀作法について勉強しておくとするか。
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