海中探索
季節は秋に突入した。
現在、アングリア王国は3つの要塞を奪取していた。
さらに調査を何度か行った結果、レリジオ教国はアングリア王国との航路上に5カ所の要塞を築いていることが判明。つまり、すでに半分以上の要塞をこちらは手に入れているわけだ。
短期間に多くの敵拠点を攻略していると言うことは電撃戦とも言える。だがそれは、急激な補給路の伸びに繋がってしまう。
そうなると補給がどんどん困難になってしまうが、今のところ問題なく補給できている。
というのも、レリジオ教国は最も魔物に襲われない、比較的安全な航路上に要塞を築いていた。
逆に言えば、後方にあるアングリア王国の補給路を襲うには魔物の襲撃リスクが高い海域を突っ切らねばならず、普通に船団同士の戦闘を行うよりも多い損害を出す可能性が高いのだ。
そのため、レリジオ教国としてはアングリア王国の補給路を狙う行為は分が悪すぎる博打なのだ。
また、アングリア王国は本格的に戦争に入る前に、水上で戦えるハンターの育成を行う施策をスタートさせた。
そのデモンストレーションとして僕に依頼が回ったことがあったが、その成果もありある程度水上で魔物と戦えるハンターが育ちつつある。
そんなハンターを民間船に乗せ補給依頼を行うことで、万が一魔物に遭遇しても上手くあしらう事が出来るようになった。
その結果、かなり安定して占領した砦に物資を補給出来ているのだ。
僕も数多くの補給依頼をこなしている。
今回は3番目に奪取した砦――現在は『3番砦』と呼ばれている――への補給依頼が終わったときに、そこの守備隊長から頼み事をされていた。
「海中探索ですか?」
「はい。実は――」
話を要約すると、数日前にこの砦の沖合に不審船を発見。その船から何かが投下されたのを警備していた船の乗組員が目撃したらしいのだ。
なお、不審船は小型で船足が速く、逃げられてしまったらしい。
「投下された物は何かわかりませんが、この要塞や部隊に危害を加える物であっては非常に危険です。ですので、なんとか回収できないものかと……」
「まぁ、可能ではありますよ」
実は、へーゲル号の強化の中には海中探索にうってつけの追加装備があるのだ。
それを増設すれば、海中探索や物品の回収も行える。
「ただ、その装置を使用するのは初めてですので、上手くいくかどうかはわかりませんが……」
「それでも構いません。どうか、よろしくお願いします」
翌日、僕達は守備隊長から教えて貰った地点にやって来ていた。
へーゲル号の甲板には、茶色いスーツとヘルメットが2着ずつ、そして金属で出来た四角い物体が設置されている。
「これで海の中に潜れるのですか、兄様?」
「ああそうだよ、メアリー」
これが、昨夜に8000ポイントを消費して設置した『潜水装置(人用)』だ。
船の全長が30メートル以上であることが設置の条件だが、とっくにクリアしているので問題ない。
もちろん、使わないときは大砲と同じく甲板の下に収納される。
これを使って海中の調査を行い、不審船が投棄したとされる物体を調査・回収する。
僕は半袖短パンという服装の上からスーツを装着し、ヘルメットをかぶる。
スーツの首の後ろ側にホースが繋がっており、甲板にあるポンプ(金属の箱状の物体)から空気を供給するシステムだ。
「じゃ、行ってくる」
「気をつけてください」
海の中はそこそこ透明度があり、美しい青が広がっているが……そんな景色を楽しむことは出来なくなってしまった。
「サメか……」
サメを数体確認した。
比較的大型ではあるが、魔物ではない。
サメは本来おとなしい方の動物らしく、空腹だったり攻撃を受けることがなければ基本的に人は襲わないという。
なので、注意していれば問題は無い……はずだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます