懐かしの面々

 先生が言った国からの依頼。それは、ハンターと共に依頼を受け、遂行するという物だ。


 事の発端は、先日エルマン君の船を助けに行った際、僕達が不審船と交戦したことだった。

 拿捕したリーダー格と思われる船を軍と海運ギルドが共同で調査した結果、公式にレリジオ教国の船であると認定された。

 この結果はフグレイク連合と同じく、レリジオ教国の脅威が時期を問わずアングリア王国に訪れつつあることを意味しており、国は衝撃を受けたそうだ。


 具体的な方策については検討を始めたばかりだが、早く決めなければならないので1ヶ月以内には結論を出したいのだという。

 しかし、船の航行は常に行われており、方策が決まるまで運航を停止してくれとは言えない。そんなことをすれば国民の経済や生活に多大な影響を及ぼしてしまう。


 そこで、国は『なるべくハンターを乗船させるように』と呼びかけを行っている。

 多くの船は、通常の航行にハンターを乗せていない。基本的に船は魔物と出会った場合、まず逃げる方法を考えており、討伐する事は一切考えていない……というか、出来ないのだ。

 出会った魔物を討伐する例もあるにはあるが、それは船員の誰かが強力な戦闘系の才能を持っており、討伐を狙える状況のみに限られる。

 つまり、僕達が経験したハンザ連邦・フグレイク連合との航行の途中で魔物を倒しまくるというのは例外中の例外なのだ。


 それと、ハンター側も水上で戦う技術を持った人が少ない。

 水上だと船の上という限られた行動範囲でなんとかしなければならないので、それに対応するのは一筋縄ではいかない。

 逆に言えば、水上での魔物狩りはブルーオーシャンな状態なので、努力して水上戦闘に対応しようとする人も一定数いるが、やはり少数派であることは否めない。

 つまり、以前一緒に仕事をしたアルフさん達は希少な水上戦闘技術を持つハンターなのだ。


 そういうわけで、基本的に別々の世界で生きている両者だが、レリジオ教国がアングリア王国付近まで進出したことが判明して状況が変わった。

 レリジオ教国が民間船を標的にすることはフグレイク連合やエルマン君の船を襲った件から見ても明らかだし、海軍を警備に動員するにしても数に限りがある。それに国外への航路も含めるとなると多大な負担が掛かるし、他国との協議も行わなければならない。

 そこで、ハンターを護衛として乗せて、レリジオ教国の船と遭遇したら沈めるまでいかずとも逃げ切れるようにするのだ。


 ハンターは『魔物ハンター』と『マンハンター』の2種類に分かれる。

 魔物ハンターはその名の通り魔物の討伐を生業とし、マンハンターは指名手配犯や盗賊を捕まえて報奨金を得る。

 フレデリックさんは海軍に入る前は海賊専門のマンハンターだったし、スーハウのサルマント支部長は魔物ハンターとマンハンター両方で活動していた。


 つまり、ハンターに護衛を頼んでも何ら問題は無いのだ。


 問題は水上戦闘に慣れたハンターが少ないことだが、国は水上戦闘に慣れさせるため、そして船乗りとハンターの連携を強化するため、訓練目的の依頼を大量に出すつもりらしい。

 そしてヘーゲル号は『海の暗殺者』の異名とその大きさで最近知名度が上がってきているし、過去に何度かハンターとの仕事を行ったことがある。

 そういった経緯から、雰囲気作りの旗頭として最適ということでお呼びが掛かったらしい。


「問題は、ハンターの誰が来るかということですが……」


「コーマック君も知っている人らしい。国も、この依頼の成否が今後の民間船の運命を左右すると考えているからな」


 そういうわけなので、僕はこの依頼を受諾することにした。




 数日後。

 僕はアングリア王国北西部にある『ウッズデパーチャー』に来ていた。

 ウッズデパーチャーの周辺はアングリア王国有数の大森林地帯になっており、林業が非常に盛んな地域だ。

 この大森林地帯で採れた木材はウッズデパーチャーの港に集まり、アングリア王国全土に船や商隊によって輸送される。

 最近は造船技術の進歩の影響で造船用の木材の需要が増しており、最近のレリジオ教国の動きへの対策も考えると今後も需要は増え続けるであろう。


 今回僕が行う任務は、このウッズデパーチャーから南回りで王都へ向かう航路上の警戒、及び航行上の危険となる魔物の掃討である。


 そして、今回同行することになったハンターだが。


「久しぶりだな、船長!」


「……最近の活躍は耳にしている」


 一人は、これまでに何度か一緒に仕事をしているアルフさんだ。

 そしてもう一人は……学園時代に銃クラスで共に腕前を競い合った、リディア・キャンプスさんだった。

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