銃火器クラス
許可が出てから、僕は午後の授業に銃火器クラスで参加することになった。文字通り、銃火器関係の才能を持つ子を集めて授業をする。
ところで、午後の授業は多くの場合、自前の武器や道具がある場合は持ち込みが可能だったりする。剣や槍のクラスで自分の愛用の物がある場合、それを持ち込んで使用できるのだ。
それは銃火器クラスでも同じで、愛用の銃があればそれを使用することができる。
この措置は、使い慣れた武器や道具を使い続けた方が、上達が早いという考えがあるからだ。
そういうわけで、僕もヘーゲル号の武器庫にある銃を持ち込んでいる。それも様々な種類を用意していた。
「では、始めに射撃場で撃ってみましょう」
銃火器クラスの授業は、始めに射撃場で的を相手に発砲するところから始まる。
入学当初はほとんど的当てに時間を費やしていたらしいが、1年も経てば慣らし運転扱いとなる。
僕は2年生からの編入だが、時々射撃訓練を行っていたせいかなんとか周りについて行けているという感じだ。
僕の銃は空気圧で弾を発射しているため、静かで煙が出ない。おまけに連射出来るし射程距離も長く、種類によって性能も違う。
そんなオーバーテクノロジーな銃を使っていれば、他の子達から注目を集める。
「コーマックも授かり物の銃を持ってたのか。船だけじゃなかったんだな」
「いや、簡単に言うと銃は船の付属品みたいな物だよ。メインは船だから」
そんなことより、こいつが言っていたことが気になった。
コーマック『も』。
これはつまり、誰か他に授かり物を所有している人が居るということ。それについて詳しく聞いてみることにした。
「ほら、あいつだよ」
こいつが指さした先には、小柄な女の子がいた。ぱっと見無口でクールっぽい感じがする。
その女の子はバンバン銃を撃っていたが、その銃がちょっと違っていた。
なんと、次々と形を変えているのだ。しかも性能も違っているようで、自動小銃、拳銃、スナイパーライフル、散弾銃等々、あらゆる形態に変化出来るようだ。
「リディア・キャンプス。キャンプス男爵の次女だよ」
「あのキャンプス男爵か」
これはアルフさんを始め魔物ハンターと交流したから知ったことだが、キャンプス男爵領はアングリア大陸の北側にある内陸の領地で、よく魔物が出現する土地だ。
そのためキャンプス男爵領は魔物ハンターの聖地のような場所で、その頂点に立つキャンプス男爵家の人々は魔物狩りのスペシャリストが揃っているらしい。
つまり、あのリディアという女の子は、魔物狩りの英才教育を受け、さらに授かり物の銃を持つという計り知れない戦闘力を持っている可能性が高いのだ。
「俺達もリディアに勝てたことがなくってさぁ。だから、コーマックには期待してるんだぜ?」
「わかった。銃の才能を持っているわけではないけど、努力してみる」
このとき、まだ僕は銃火器クラスの勝負について全く知らず、こんな安請け合いとも採れる返事をしてしまったのだ。
意外なことに、この世界では本物の銃を使った戦闘訓練が存在する。
銃に特殊な魔道具を装着するのだ。この魔道具を装着することにより、コルク製の訓練用模擬弾が撃てるようになる。さらに微弱な雷魔法を弾に纏わせ、被弾したことを弾が当たった人に伝える能力もある。
ただ、この魔道具は非常に高価で、軍でも一部の部隊が所有しているのみだ。
それなのにこの学園では銃火器クラスの人数分きちんとそろえられている。流石は金持ち学園と言ったところか。
そして現在、僕はこの戦闘訓練に参加している。もちろん自前の銃は訓練モードにしてある。
場所は学園の敷地内にある森で、そこで2チームに分かれ、野戦を想定した訓練を行っているのだ。
「……よし、ヒット。次のターゲットを探す」
チームメイトと話し合った結果、僕に割り当てられたのは狙撃手。一番射程が長い銃を所持しているため、まあ妥当な役割だと思った。
そして木の上に昇り、ウロチョロしている敵チームの人をバンバン狙撃しまくり、今も一人脱落させた。
そして僕の銃は空気圧を使用しているため、発砲音が静かだ。そのため敵はこちらの位置を探しにくい。
かなり有利に運んでいるが、いつまでも安泰でいるわけではなかった。
ドン!
発砲音が響いたと思ったら、自分のチームが一人脱落した。
明らかに狙撃されている。音がする方向を見てみるが、どうも隠れ方が上手いらしくハッキリと姿が見えない。
なので、敵の狙撃手が居そうな所に何発か銃弾を撃ち込んでみた。
(だめだ、コーマック! 当てずっぽうに撃っちゃ!)
近くに居たチームメイトがジェスチャーでそう教えてくれたが、そいつはすぐ相手の狙撃手の手で脱落させられた。
そして次の瞬間、僕の近くに銃弾が撃ち込まれた。
ドン、ドン! という発砲音と共に近くの木や枝の表面が砕かれ、破片が弾け飛ぶ。
僕はなんとか反撃しようと観察を続け、ようやく相手の狙撃手の姿を視認できた。
そして銃の形や銃撃の技術、そしてぼんやりと見える体型から推測すると、あのリディア・キャンプスで間違いなかった。
そして問題が1つ。僕の持っている銃の射程距離外にキャンプスさんがいる。
やはり船の付属品である僕の銃と、最初から銃として授けられた彼女の銃とでは性能が桁違いだった。
とにかく、僕は近づかなければ狙撃は出来ないわけで、木から飛び降り距離を詰めようとしたところ――。
――ドン!
僕はあっけなく脱落した。
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