スティンガー・スティングレイ
スティンガー・スティングレイ。温暖な海に生息しているエイ型の魔物。
魔物らしく大型で全長50メートルもある。
この魔物の最大の特徴は、尾びれの根元に生えているトゲ。
このトゲには毒が含まれており、かすり傷でも受けてしまうとその周囲が溶けてしまうくらい強力だ。
そのトゲをミサイルのように発射してくるのが、このスティンガー・スティングレイの最大の特徴だ。
しかもトゲそのものも非常に固く、普通の船では簡単に貫通してしまう。
「ヘーゲル号だとどうだ?」
『現在の装甲レベルですと、傷1つ付かないと予想されます』
装甲を強化しておいて良かった。
スティンガー・スティングレイは倒すのが厄介な魔物だとされている。
エイ型の魔物なので、基本的に海底を這うように泳いでいる。しかも50メートルもある巨体なので、それなりに深い海でなければならない。
と言うことは、スティンガー・スティングレイを討伐するためには深い海の底まで届く攻撃を放たなければならない。
そんな攻撃方法を持つ人なんて限られてしまっている。だから、討伐するのは大変なのだ。
「アルフさん、船が消息不明になっている原因は、アレですか?」
「ああ、間違いないと思うぜ。スティンガー・スティングレイは獰猛だからな、通りがかる船を襲いまくっているんだろう」
なお、ヘーゲル号が初っぱなから襲われなかったのは、スティンガー・スティングレイは夜に活動が活発になる夜行性だから。
今は昼間だから、積極的に襲う気にはなれなかったんだろう。
さて、今回は調査なのでここら辺でさっさと港まで逃げて報告をして終わりでも良いのだが、他の人の意見も聞いてみた。
「はっきり言って、このまま討伐した方がいいと思う。この船には泳ぐ爆弾が搭載されているんでしょう? なら結局討伐依頼がそのまま出されるのは明白だし、それにもう挑発してしまったから逃げるのは難しくなったんじゃない?」
ジェニーさんがそう言うと、ガツンと固い物同士がぶつかったような音が。
『船底より攻撃を受けました。スティンガー・スティングレイのトゲと思われます。損傷は無し』
うん、どうやら逃げるのは難しそうだ。
「総員に通達、これより本船は対魔物戦闘態勢に移行する。目標、スティンガー・スティングレイ!」
戦闘状態に移行した僕達だが、実は当初、割と簡単に倒せると思っていた。
普通は深い海底に攻撃を届かせるなんて難しいが、このヘーゲル号にはそれを可能にする武器を搭載している。
「魚雷発射! 目標、スティンガー・スティングレイ!」
『了解。魚雷、発射します』
魚雷を使えば、簡単に海底へと攻撃出来る。特にマリーの演算能力を使えば、かなり高い確率で命中できるはずだ。
だが、そう簡単にはいかなかった。
『魚雷、破壊されました。海底からの飛来物との衝突によるものと推測』
海底からの飛来物、つまりスティンガー・スティングレイのトゲによるものだ。
どうやら相手は、自分の武器を使ってこちらの攻撃を防ぐという柔軟な思考を持っているようだ。
「次は2発連続で撃て」
『了解しました』
という事で魚雷を2発発射したが、またしても対応されてしまった。
しかもほぼ立て続けに打ち落とされた。どうもトゲの発射インターバルはかなり短いらしい。
これでは、魚雷発射管を増設してもあまり意味が無いと思う。
「船長、あたしに考えがある。合図をしたら泳ぐ爆弾を撃ちまくってくれる? それと、魔物の位置を教えて欲しいんだけど」
「わかりました。マリー、ジェニーさんにナビゲートを」
『了解。ナビゲートを開始します』
ジェニーさんに考えがあるようなので、それに乗ることにした。それ以外に作戦を何も思いつけない以上、ジェニーさんの考えだけが頼りだ。
そのジェニーさんだが、後ろに装置を取り付けた矢に釣り糸を結びつけていて、さらに甲板の策に足を掛け、海に向けて弓を構えていた。
「今!」
「魚雷発射! 連続で撃ちまくれ!!」
そして何発も連続して魚雷を発射。その魚雷の大群に紛れ込ませるように、ジェニーさんは矢を放った。
しばらくすると、マリーから状況が伝えられた。
「スティンガー・スティングレイ、何らかのダメージを受けた模様。小さい刺し傷と思われます」
「矢は命中したようね。アンバー、お願い」
「……うん」
すると、アンバーさんは釣り糸に手を触れ、雷魔法を発動。
その電撃は釣り糸を伝い、海中へ注ぎ込まれた。
数秒して、さらにマリーから報告が。
『スティンガー・スティングレイ、討伐を確認』
アルフさんが釣り糸をたぐり寄せ、スティンガー・スティングレイを引き上げた。
後で話を聞いたところ、ジェニーさんの矢の後に付いていたのは矢の推進装置となる魔道具で、水中で矢を進ませるために使ったらしい。
さらに釣り糸を結びつけ、スティンガー・スティングレイに矢を突き刺す。そこへ釣り糸を介してアンバーさんの電撃を食らわせる。
雷魔法は水中ではかなり広範囲に攻撃を届かせることが出来、海底でも攻撃を届かせることが出来るが、コントロールが難しくあちこちに攻撃が散ってしまうため、威力が減衰してしまい、魔物を討伐できるか怪しいらしい。
そこで、アルフさんの釣り糸を使って威力を収束させることにしたようだ。
そして矢を魔物に気取らせないため、魚雷を連発して囮にしたようだ。
こうして、スティンガー・スティングレイの討伐はいつの間にか完了。サザンエントランスへと凱旋した。
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