レインサーペント・リベンジ

『まもなくレインサーペントがいる海域へ到達します』


 再びレインサーペントと相まみえる時が来た。

 あのレインサーペントの魔力をマリーが記録しており、位置もバッチリ把握していた。そのため、僕達は迷わずまっすぐレインサーペントの所までやって来られた。

 その証拠に雲が分厚くなっており、天気がどんどん悪くなっている。

 甲板にはアルフさん、ジェニーさん、アンバーさんがすでに待機しており、いつでも戦闘状態に移行できる。

 僕はアルフさんの助言で最初から艦橋にいた。


『12時の方向より魔力反応。レインサーペントが来ます』


「よし、戦闘開始だ! 船長、頼むぜ!」


「了解。3時方向へ回頭。面舵いっぱい!」


 アルフさんの号令で戦闘を開始する。

 レインサーペントは右目がジェニーさんの弓が刺さっていて潰れており、僕達に対して怒りを持っているはずだが、襲ってこない。警戒されている。

 だからまずはこちらへ引きつけるため、ヘーゲル号の左舷をレインサーペントへ向け挑発する。


「左舷、榴弾装填! 相手の顔を狙って挑発するぞ」


『了解。榴弾装填。照準合わせ完了。発射』


 10連続もの空気の破裂音と共に、レインサーペントの顔目がけて弾丸が飛び――爆発した。


「まだ! これも取っときなさい!」


 さらにジェニーさんが弓を射かける。

 矢を何発も立て続けに飛ばすが、前回のようにレインサーペントを負傷させることは出来なかった。


 だが、これで十分だ。レインサーペントは自分を負傷させた状況と同じ状況に置かれることで、あの時の怒りが再び沸き起こるはず。


「シャアアアアアアアァァァァァァ!!」


 目論見は当たり、レインサーペントは感情に任せヘーゲル号に向かって突進をしてきた。


「これを待ってたぜ!!」


 アルフさんはレインサーペントを引きつけると、釣り竿を振る。

 釣り針と糸はレインサーペントの体に絡みつく。勿論アルフさんと言えどもレインサーペントを今のまま釣り上げるなんて不可能だ。

 だから、アルフさんは釣り糸をナイフでさっさと切った。


「よし、あいつの動きが鈍った!!」


 実はアルフさんの才能は、単純に釣りが上手いという才能ではない。

 アルフさんが放った釣り糸に絡みつかせると、相手の能力が下がるという効果があるのだ。しかも身体能力だけで無く、魔力に対しても効果があるらしい。

 そんな特殊な釣り糸に絡まったレインサーペントは、動きが鈍る……というよりも、ほとんど動けないでいた。


「……今」


 そして、ここでアンバーさんが動いた。

 アンバーさんは魔力を貯めていたらしく、彼女の指輪は黄金に光り輝いていた。

 そしてその魔力を全て空に放つ。あんなに分厚い雨雲に強力な電撃を放てば、雲が帯電しゴロゴロと不審な音が鳴る。


 とどめにアンバーさんが微弱な電撃をレインサーペントに放った。レインサーペントは微弱ながら帯電したが、この状況ではそれで十分。


 ビシャアアアアアアァァァァァッ!!


「アアアアアアアアアァァァァァァァ!!」


 刹那、雨雲によってアンバーさんが最初に放った電撃の何十倍にも増幅された雷が、レインサーペントに轟音と共に落ちた。

 レインサーペントの体が帯電していたため、それをマーカーにして雷が落ちたのだ。


 そして後に残ったのは、所々焦げ、プスプスと煙を出すレインサーペントの亡骸だった。


『生命反応、消失。レインサーペントの討伐に成功しました』


 マリーの報告を示すように、雨雲が散っていく。


「……オッシャアアアアアァァァァ!!」


「やった、倒せた!!」


「……うん」


 甲板では、喜びの声を上げるアルフさん達の姿が。


「マリー、銛弾装填。ロープを付けて。レインサーペントを引き上げる」


『了解。発射します』


 そしてレインサーペントの遺体を引き上げると、この海域を後にしてサプライトハウス港へと進路を取った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る