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僕は帰路を重い足取りで歩いていた。
光の話を聞いて自分の身勝手さを思い知ったからだ。今までの考えを全て改めさせられるほどに光の人生は壮絶だった。
「はぁー」
僕は溜息をつきながら先程の会話を思い出していた。
「アフリカの紛争地域で捨てられた?」
聞き返してみるが反応が帰って来ない事から2度同じことを言うつもりがないということがハッキリとわかった。
「次の話をしてもいい?」
早く終わらせたいからかお茶を飲みながら話の続きをしていいかと確認してくる光に僕は頷くことしか出来なかった。
「普通ならそこで死んでいたのでしょう。でも私は運良く現地の方々が助けて育ててくれたんです。自分たちの生活ですら満足に遅れていないというのに彼ら彼女らは私の面倒まで見てくれました。食事も子供の私に優先的に回してくれましたし感謝してもしきれませんでした。今思うと本当に優しい方々だったのだと思います」
僕でも彼女の生活がどれだけ大変なものだったのかわかるほどに彼女の人生は壮絶だった。
「私が6歳のときです。私たちが生活していた場所が戦場になったんです」
その時の光景を思い出しているのか光は悲しげな様子で俯いていた。
「私を育ててくれた家族や知り合いは皆殺されてしまいました。私は生き残ることに必死で何人かを殺しながら逃げて逃げて逃げてそして森の中で迷ってしまったんです」
家族が殺され逃げた先で森の中で1人、どれだけ孤独だったのだろうか。
「そこでマァムと出会ったんです。彼女は私の第3の家族として私に新しい名前を与えてくれて世間について色々と教えてくれました。マァムの仕事は戦場カメラマンでこの紛争地域での悲惨な出来事を写真で撮りそれを世界に伝える仕事なんです。もしマァムが戦場カメラマンではなくそこで出会うことができていなければ私は多分野垂れ死んでいたのでは無いでしょうか?私はマァムに連れられてこの日本にやって来ました。マァムは日本人でしたので日本語が使えないと私は会話できなかったので必死に勉強して話せるようになりました。そのおかげで日本に来てから言語で困ることはありませんでした。でも私は日本に来ても他人と接することが怖かったんです。武器がないと殺されるのでは無いかと心配ですし、やはり防衛本能として殺すという行為が未だに抜けきっていないんです。何よりも誰か私の周りの人が死ぬ事が怖いんです。だから私は他人に冷たい態度を無自覚に撮り続けてしまうんです。本当はもっとみんなと仲良くしたいのですがどうしてもまた失うのではと思ってしまうと他人を突き放すようなことばかり言ってしまうんです。本当に滑稽ですよね」
この時ようやく僕にも光という人物像がはっきりと見えてきた。彼女は日本に住む普通の少女とほとんど変わりないなのだ。紛争地域にずっといたせいで武器がないと安心できないといった所や防衛本能として殺られるくらいなら殺ると言った考え方、そして育ての親が死んでしまったことによるトラウマで他人を遠ざけたりしてはいるが本当は誰かと仲良くしたいと思っているごくごく普通の少女なのだ。
「だから本当は嬉しかったんです。あなたが私に話しかけて下さって、街を案内してくださって、本当にありがとうございました」
光がどこか嬉しげな感じで僕に話しかけてきて僕は気まずい思いをしていた。彼女は失うのが怖いと言っていた。そして僕は後半年で死ぬ。そんな僕が彼女のそばにいてはいけないんだ。
今まで自分が世界で一番不幸だと言った感じで行動してきていたが僕なんかよりもよっぽど彼女の方が不運で大変な人生を味わってきている。これ以上僕の身勝手な理由で彼女を苦しめるわけにはいかなかった。
翌日から僕は光を避けるように行動した。昨日のこともあってか光が僕に話しかけようと近づいてくるがそれを徹底的に無視して避け続けた。そうこうしていたら彼女の周りにも人が集まり出した。光は他人との関わりを持つことに恐怖を感じなかなか最初の一歩を踏み出せていなかっただけで元々ポテンシャルはあったのかクラスメイトたちとの中を急速に縮めていった。
だというのに彼女は今だに僕に関わろうとしてくるので昼休みに僕は彼女から逃げるように教室を出て体育倉庫で弁当を食べることが日常となっていた。
「あれだけ友達ができたんだし後半年で死ぬ僕なんて放っておいてもいいのに」
ガシャんと後ろで何かものが落ちる音が聞こえた。慌てて僕が振り返るとそこには呆然とした様子の光の姿があった。
「後半年で死ぬってどういうこと……」
この日最もバレて欲しくない人物に僕の秘密がバレてしまった。
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