09話.[気になっていた]

「ちょっと待った!」

「ぐひゃぇ!? ……と、止めたいのだとしても物理的に引っ張るのはやめようよ」

「ねえ、もしかして今日も航生くんの家に行くつもり?」

「うん、航生君とそういう約束をしているからね」


 そうでもなければ寒い中、敢えて外に出たりはしない。

 あれからはなんか意地悪になってこっちに来てくれなくなったから、一緒にいたいなら私から行くしかないんだ。


「たまには妹の相手もしてほしいんだけど!」

「それなら一緒に行く? 航生君兄に会えれば真海も満足だよね?」

「ふたりきりがいいのっ」

「んー、だけど約束をしちゃったからなあ……」


 やっぱり行けないなんてそんな風にはできない。

 なので、真海の腕を掴んで航生君の家に向かうことにした。

 まずは彼氏に会わせることで落ち着かせる、落ち着いた後ならゆっくり話すことができるから時間を貰うことにしよう。


「どうぞ」

「お邪魔します」

「私は行くつもりはなかったけど、まあ、お邪魔します」


 それですぐに分かったことだけど、リビングには優里香ちゃんもいた。

 今日は兄君が呼んだみたい、友達だからそれはそれこれはこれというやつらしい。


「ちょっと航生くん、もうちょっとお姉ちゃんをコントロールしてよ。休日となればすぐに出ていくからゆっくり話すこともできないんだけど」

「ひとつ言わせてもらうとそら先輩が俺と過ごしたいと言ってくれているんだぞ?」

「それでもそこはしっかりした後輩ということで止めてよ、初めてなんだからのめり込みすぎちゃうんだよ」


 事実、夏休みのときの彼のようになってしまっていた、そのため、真海が言っていることは正しかった。

 まあ、こちらからもひとつ言わせてもらえば彼氏彼女の関係になったからではなくて、最近はずっと一緒にいたからだったが。


「まあまあ、落ち着いてよ真海ちゃん」

「相手をしてもらえないのは寂しいんですから」

「まあ、この件に関してはどっちもどっちってやつだな、真海だって部活がない日は俺といようとするだろ」


 す、すごい発言だ、他の子が言うのならともかく本人が言っちゃうと微妙に感じてくる。


「お、お家でならちゃんと相手をさせてもらうから安心してよ」

「約束だからね? 破ったら航生くんにお姉ちゃんの恥ずかしいところを全部教えるから」


 そもそもわざわざ言わなくても、という話だ。

 いいところは全く見せられていない、だからこそ時間を増やそうとしているんだ。


「よしっ、これで解決したわけだからみんなでゆっくりしよー」

「ははは、優里香は元気だな、それぐらい好きな人間にも積極的になってほしいが」

「う、うるさいよ」


 私はそれよりも黙っている航生君が気になっていた。

 ただまあ、今回も私が悪いわけではないから不安ということはなかった。

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