第3話 『津田梅子~お札になった留学生~』感想・伊藤梅子夫人が芸者さんに渡したお車代
『津田梅子~お札になった留学生~』の中で、伊藤博文が芸者さんたちを連れて帰ってきた時、伊藤梅子夫人が「主人がお世話になりました、お車代でございます」と渡すシーンがあります。
あれはお車代という言葉通り、お手当つまりはお金です。
伊藤梅子夫人には、伊藤博文の遊び相手である芸者さんに気前よくお手当を渡していたという逸話が残っています。
真偽不明の逸話ではありますが、伊藤が芸者さんを連れて来ても快く出迎えたり、年若い芸者さんには「あなたは国事に忙しい公(伊藤のこと)の慰めになっているのですから」と励ましつつ、お小遣いを渡したとかいろんな話があります。
女性史学の高群逸枝氏によると、伊藤博文のお気に入り芸者であった大阪新地の小吉は、月300円の手当をもらい、梅子夫人からも私邸の出入りまで自由にしてもらうほどかわいがられたそうです。
月300円がどれくらいかというと、同時期の小学校教員の初任給が10円から13円くらいですので、その30倍。
今だと小学校初任給が20万ほどですので、小吉は月に600万円もらっていたことになります。
もっとも伊藤の寵愛は2年ほどでした。
伊藤はあまり長く一人の芸者さんに執着することなく、1、2年で結婚相手を見つけてあげるよう周囲に頼み、その芸者さんとお別れしてしまいます。
ただ、月600万円もらっていた小吉は、伊藤の元でのいい生活が忘れられず、結婚先でうまくいかなかったという話もあります。
伊藤梅子夫人自身も元々は下関にある置屋・いろは楼で「小梅」と名乗って芸妓をしていました。
自分も芸妓だったこと、伊藤が芸者さんと遊んでも長く愛人として囲わなかったこと、正妻である奥様の梅子夫人を立てていたことで、バランスが保てていたのだと思います。
筆者は若い頃は「とはいっても、梅子夫人も嫌だったのでは……?」と思っていたのですが、年を取って周囲に聞くと「子どもが生まれた後は、子どもとの生活がメインで旦那の相手をしてる暇はない」とか、中には「子どもの保育より、旦那の相手こそ外注したい」なんて声もあり、自分の生活が脅かされなければどうぞという既婚女性もいるようなので、梅子夫人も玄人ならまあいいやという気持ちもあったのかもしれません。
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