第2話 『津田梅子~お札になった留学生~』感想・女子留学生だから仕事がなかった?
『津田梅子~お札になった留学生~』の感想で女子留学生の扱いについて疑問をお持ちの声を見たので、書いていきます。
まず、最初に、梅子さんが英語しか喋ることが出来なかったのを「アメリカの家庭は日本らしさを捨てさせ、自分色に染め上げるのか」というご不満を見たのですが、それは無いと思います。
梅子さんと同時期に留学した面々でも、日本語を忘れずに帰ってきました人たちもいました。
これはアメリカでの日本側の保護者の影響かと思います。
梅子さんと同じく、森有礼さんの保護下にあった神田乃武君も日本に帰国したとき、英語しか喋れなかったのですが、これは森有礼さんが、極力、アメリカ人の中だけで暮らさせる生活をさせていたのが原因と言われています。
乃武君は後に日本語を学び直しますが、手紙はずっと英語のままでした。
「日本の公用語を英語」にと考えていた森有礼さんらしい教育方針と言えるかもしれません。
岩倉使節団の面々が留学した頃は、日露戦争後のような排日感情はなく、アメリカの人々がそう仕向けたということはないと思います。
さて、ドラマを見て「女子留学生だから仕事がなかった」と感じた方が多かったようですが、実はそうではなく、男子留学生も仕事がありませんでした。
梅子さんたちと同様に「英語の先生の仕事ならあるよ」と言われ、塾や学校の先生の仕事に就いたりして「せっかく長い間、留学をしたのに、なんだこの扱いは!」と悔しがる男子留学生も多かったのです。
同じく「国のために役に立てない」だったり「主家(元の藩主)のために役に立てない」と悩んだり、新知識を生かそうとしない政府に怒り、反政府活動に走る留学組もいました。
後に三井財閥の総帥になる團琢磨も、福岡の修猷館→アメリカ留学→マサチューセッツ工科大学鉱山学科卒業という、今でもすごいエリートだろうと思うような経歴でありながら、帰国後は学校の先生です。
梅子さんが「私は大学を出てないから……」とたびたび言っていましたが、MITを出ていてもそんな扱いでした。
團琢磨が大学で学んだ鉱山の知識を役立てられるようになるのは、後のことになります。
なので、男子留学生は帰国したら国にポストを用意してもらい、女子留学生は仕事が用意されなかったのではなく、両方似たような環境の人たちがいたのです。
また、梅子さんたち女子留学生はアメリカでの扱いが良かったのかなと思うシーンがいくつかありました。
綺麗なドレスを着て、勉強を教えてもらったり、ステイホーム先の人に大事にされている描写があります。
しかし、男子留学生の中には、高橋是清のように葡萄園での奴隷として扱われるまでいかなくても、『学僕』という立場で、女中同様の雑用をしながら留学という人たちもいました。
女の子なので安全にという森有礼さんの配慮があったのかもしれません。
さて、今回、女性の地位が弱かったというのがちょっと伝わりづらい面として、『結婚』の話があったと思います。
ドラマの中で結婚した繁さんも捨松さんも恋愛結婚です。
これが「親の決めた好きでもない相手と結婚しないといけない」だと、昔からある話なので伝わりやすかったかなと思いますが、なにせ好きな相手と結婚してるので、それで、結婚を否定する梅子さんに違和感を持った方もいたようです。
ただ、ちょっと難しいところなのが「親が決めた好きでもない相手と結婚をする」のは男性も同じなところです。
男性側も家格の釣り合いや親の希望で相手が決められました。
会ってみて合うかどうかというお見合い形式もありましたが、中には会わないで結婚相手が決められる例もありました。
「男子たるもの、どのような相手だろうと文句を言うものではない」という気概?があったのかもしれません。
もっとも男性は好きに浮気が出来るじゃないかという意見もあるかもしれませんが、逆に芸者さんで好きな人がいても、その人とは結ばれない苦悩などもあり、男性側も男性側で大変だった点もあるかと思います。
『結婚』感のお話ですと、一昔前は恋愛至上主義だったので「好きな人と結婚できないなんて!」はすごい悲劇だったかもしれませんが、今の若い世代だと違うかもしれません。
「昔は結婚を上司だの親戚だのが斡旋してくれて良かったよな」という話を聞くようになっています。恋愛結婚だからってうまくいくわけじゃないという結果を見ているところもあり、明治大正の結婚への評価があるいは変わるかもしれません。
また、梅子さんはウンザリしていましたが、結局は結婚を強制せずに独身を貫かせてくれたご両親は優しいのではとも思いました。
なお、梅子さんはその後、家族が出来るのですが、それはまた長くなったので別の話で。
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