第51話 攻略戦線

 飛島。

 山形県唯一の有人島であり、面積は2.75平方キロメートル、人口は204人。まぁ、島民全員が避難しているので、今は無人島なのだが。

 2015年からダンジョンが出現したが、離島にダンジョンが出現した例は数少ない。最もダンジョンが発生した離島はタダでは済まない被害が出るのだが。

 フェリーに乗ってやってきた。当然誰もおらず、僕達だけが桟橋にいる。山の方から不思議な鳴き声が聞こえた。地獄の業火に焼かれたら、こんな声が聞こえるだろうが。動物でも、人間の声でもない。

「モンスターが鳴いてる」

 サザメが言った。


 僕達のパーティ以外にも、メシア制圧するパーティーがここにいる。僕達のパーティーにはこの前顔を合わせた人間と、探索者教会からやってきた人が二名。記録係で、特に戦闘能力がないそう。

 そして、メシアを制圧するパーティーには見知った顔がいた。そう、峨々である。

 本来は対人制圧のスペシャリストなので、メシアは制圧できると踏んで良いだろう。

 桟橋で待っていると、島の中から人がやってきた。メシアの人間でも、一般人でもない。会議の中で名前が出ていた、夜目と虎子という協会の人だ。僕が初めて見る人で、どちらも顔が良い。仕事もできるんだろうなぁ。

 いらない嫉妬は胸の奥に仕舞い込み、彼らの案内のもとダンジョンに向かう。

 山道を登り、山の奥に向かう。ダンジョンは飛島の背骨みたいな形をして作られており、僕達は南にある入り口に向かっているらしい。 

 南にある入り口、とのことから北の方にも入り口があるらしく、そっちの方は元からいた探索者協会の人間がが見張っているらしい。

 程なくして、入り口に着いた。

 マヤの古代遺跡、と聞くとイメージがわかりやすいだろう。ところどころ蔦が絡んでおり、綺麗に風景に溶け込んでいる。

 夜目さんが口を開ける。

「案内できるのはここまでです。ダンジョンの構造はその配られたのを参考にしてください」

 そう言っては、二人は元来た道に戻る。

 ……あとは、頑張ってくれということらしい。


 入り口を覆う草木をかき分けて中に入る。

 中は外からの光を通さないのか、入って3歩もすれば真っ暗闇だ。協会の人が明かりを取り出す。中も遺跡のような構造をしている。床も、壁も石でできており、よくわからない言語で一面が書かれている。

 そのまま300mは進んだだろうか、目の前に分岐する道が出てきた。

 構造図から見ると、アリの巣のようになっており、目の前の分岐路も三方向に分岐している。真っ直ぐ進む道、右方向に進む道、下に進む階段とある。

 制圧するパーティーはそのまま真っ直ぐ進み、僕達のパーティーは階段を降りた。そのまま、前に進む。

 少し進むと、突然ダンジョンが

 天井から、埃が落ちてくる。

「黒宮!!」

 サザメが叫んだ。僕は周囲の闇を纏う。天井に切り込み口が入り、落ちてきた。

 直ぐに、屋根を作り、落ちてきた天井を壊す。

「案山子さん、何が起こってる」

「……戦闘のあとが上に残ってます。何かで切りつけらけた跡が……」

 そう言い終わる前に、闇が切られた。

 明かりで照らされて落ちてきたのは茶色い外套を羽織り、刀を構えた少女だった。

 それを目にした、フラは小町ちゃんと、職員の人を抱えて尋常じゃない速度で後退する。

「……杏奈!!迎撃するぞ」

「了解です」

 床に綺麗なフォームで着地したその少女は、僕達を睨む。刀にも、外套にも付いた赤いものが目についた。

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