第36話 武器
よく見ると、笹目さんの武器が、この前腰に下げていた剣ではない。この前使っていたのはどこにでも売られているダンジョンの中でも比較的使いやすい物だが、今使っているのは少しグリップのとこのが黒ずんている前のより多少短いかなと思える物だ。
かなり些細な違いで、これ全員が同じ武器使ってるのに全然気づかなかった。この前は片手で数える程しかモンスターと戦っていなかったのに、うまく捌けてるなと思っていた。
数日間で強くなるといつことは全くないが、外部の力や能力に頼れば別だ。
というか、武器を買い換えるのに結構お金がかかっただろうに。本格的に探索業として食っていくつもりなのだろうか。
僕がじっと武器を見つめていることに亮太が気づいたらしく「あっ、黒宮さん。この武器が気になりますか」と、手に持った剣をこちらに見せてくる。
ちょうどモンスターとの戦闘が終わり、ちょうどいいので話を聞いてみる。
「それどこで買ったんだ?この前使っていたのじゃないだろ」
「これはですね、一昨日笹目が買ってきてくれたんです」
「笹目さん、これはどこで買ったんだ?前使っていたのでも十分初心者の武器としては優秀だろ」
「朧気工房というところで買いました」と、剣身のところをよく見せてくれる。そこには見えずらいが【朧気工房】と掘ってある。
朧気工房?どこかで聞いたことがあるが……どうも思い出せない。
「たまたま路地裏で販売してるところを見かけまして、本物の朧気工房のものだとわかり購入してたんです」
本物の?偽物もいるのか。だとしたら結構有名なブランドだな。探索者関係の武器工房……僕でも知ってそうだが、あんま武器を使わないから思い出せん。
「他にも炎の出るレイピアとかがあったんですが、使いこなせないと思ったからこの『
神出鬼没……あっ、あれか、朧気工房。
「神出鬼没、霧に包まれたように姿がはっきりせず、いつの間にか消え去る朧の工房。そこには魔法のような武器が取り揃えてあり、運が良ければ自分の好きな武器を作ってもらえる。ていう探索者の間の都市伝説みたいなアレか」
「実際は都市伝説じゃないみたいですね」僕はそこで買いましたし、と剣を指差す笹目さん。
確か本部の探索者協会に朧気工房の職人が一人いた気がする。本部に行ける奴って結構有名な探索者ばっかで、初心者が行くことは滅多にないし、行ったとしても会えるかわからないからな。僕も実際に会ったことはないし、会えるとすれば笹目さんのように町中で偶々遭遇するぐらいか。だから都市伝説みたいな扱いとなる。
結構いいものが取り揃えてあるらしいな。実際に今使っている剣は切れ味が良さそうだし。
「休憩終了、探索を続けるぞ」
聞きたいことは聞けた、あとはここのボスを倒すだけか。現在は昼を超えて2時ぐらい、ペースがいいので今日中に探索が終わりそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます