第30話 現実主義
「なおさら解きたくないな、お前の能力が不穏すぎる。さらにお前能力で抜け出せないんだろ、そのまま待っとけ」
「えぇ、解いてよ。このままどうするつもりだよ」
「後輩ちゃん、こいつの素性を調べてくれ…………ちっ」
後輩ちゃんと連絡がつかない。これもこいつの仕業かよ。支部長との連絡も途切れてる。峨々の方を見ると一二三さんとの連絡が途切れてる。
「おい、いい加減にしろよ」
「へへーん、やっぱりダンジョンの中で電波が届くのはおかしいと思ってたんだよ。そのよくわからん電波っ子の仕業だったんだね!」
してやったりという表情をするこいつ。縄で縛って動けないのにこいつの有利な状況になっている。キララは大丈夫……じゃ、ない。床に、突っ伏し、ている、やばっ。
「おい、キララ大丈夫か!!」
やばいやばい、おいおい、キララの能力は基本無敵だろ。どういうことだ。いつも手元にあるキャンディもいつの間にか無くなっており、フリルのついてる魔法少女のような服も消えて下着一枚。
ヤバイ。
峨々がキララの容態を見ている。
「いや、けど偉い人と話した方がすぐに話が終わるかな?」
こいつ……。余裕そうな表情で……。
「ふっふっふ、ほれ、早く偉い人と連絡を繋ぐのだ!」
スマホを見ると、後輩ちゃんの能力が無いのに電波が通っている。
「……どういうことだよ」
「早く連絡とりなって、僕は暴力に頼らない話し合いがしたいんだよ」
「最初から暴力を振るおうとはしなかっただろ」
「……そりゃそうか。そうだな、僕の早ちとりだったようだね。じゃあ縄を解きな、話はそれからだぜ」
こいつの身体能力自体は高くない。
…………渋々縄を解く。
「お、解いてくれた。ありがとさん。お返しに僕の力も解いてあげよう」
そう言って指を振るうと、携帯に人影が現れた。
「え?どういう状況ですか?突然スマホから追い出されたんですけど」
後輩ちゃんが帰ってきた。キララの方を見ると、服もキャンディも戻っている。
「さーて、話し合いしようよ」
パッパッと、体のホコリを払って僕たちに指を指した。
「……目的はなんだ」
「おっ、質問が変わってる。名前だったり、僕の
クルクルと体を回しながら話すこいつ。いちいち煽りを入れてくるのが腹ただしい。一体何がしたいんだよ。
こいつの能力は分からない。だが、後輩ちゃんが消えたこと、キララの能力の解除、僕が影を操れなかったことを含んだら、能力の1つに『能力の無効』がある筈。
峨々から受けた傷の回復。電波をここまで繋いだことについては説明がつかないが。
「おっ、怒ってる感じ?親切な僕が話してあげようか」
満面の笑みで五月蝿い動作をしながらちかづいてくる。こいつはいちいちポーズをとらなきゃ話せないのか。
「いちいちうざい」
「キララ、こいつに能力を使われるとまずいから黙っとけ」
「……僕の目的はね、」
特にないんだ、と目の前にいるこの野郎は言いやがった。
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