第31話 帰還経路
「……そうか、特に無いのか」
「そうそうそう。だって〜、何でここに僕がいるのかも〜、自分で理解してないし〜」
「とりあえず、一緒にダンジョンから出ろ」
こいつを連れて階段を降りる。
「え?話に途中なのに降りちゃうの?まだまだ質問することとかあるじゃん!!」
「お前が頭のネジが外れている一般人だということがわかったから相応の機関に突き出す」
僕のセリフに唖然とした表情。こいつに自白剤とかを投与しない限り話さなさそうだから、ここでどうこうするというのを諦める。……多分敵対はしてないとは思う。多分。
「うわぁ、結構まともな対応をするじゃん」
暗い中、足を踏み外さないようにゆっくりと歩く。こいつに結構時間を使ったので、モンスターが復活してないといいのだが。
「いやぁ、みんなに嫌われちゃったみたいだぁ。僕ってそんなにうざい性格をしてるかなぁ?至って真面目な性格だと思うけどな」
一二三さんによると階段の位置は変わってないらしいが、ここは変動型ダンジョン。いつの間にか構造が変わっていてもおかしくない。短い間隔で連絡を取り合う。
「ねぇねぇ、ロリっ子ちゃん。今さっき痛かったでしょ。ごめんね、僕、君がそんなふうになるとは思ってなかったからさ」
「どうやったの?」
「何が?」
「私をもとのすがたにしたこと」
「ふっふっふ、そんなことか。あれはね、僕の偉大なる右手から発せられる偉大なるパワーを持ってして起こした偉大なる現象であり、」
「どういうこと?」
「……僕の能力によってだよ、ロリっ子ちゃん」
「へぇ〜そうなの」
そろそろ4階に着く。ここのモンスターは蜂。登る時に蜂の巣ができていたことから、復活しても1日2日立たないと馬鹿げた量で襲ってこないだろう。
「そうだ、ロリっ子ちゃん。飴いる?」
「いる!!!」
「キララちゃん、知らない人から物をもらっちゃいけません」
「おっと、君は電脳空間という厨二心が溢れる世界にいる電波っ子ちゃんじゃないか」
「そうですよ、電波っ子です。今さっきからキララちゃんに随分熱心に話しかけて。もしかしなくてもろロリコンですか」
「いやいや、僕をロリコンなんて不名誉な言葉で表さないでほしいなぁ。紳士さんと呼びたまえ」
「紳士さん?」
「キララ、こいつにかまうと悪影響だ、一旦離れろ」
……後ろの方がだいぶ騒がしい。
「さてと」
見た感じ蜂はいないようだ。羽音はしないし。黄色いのがこちらに飛んでくる様子は見当たらない。近くに階段があったはずなので、そちらに向かう。
特に何事も起こらずに、3階まで降りた。
「だから、キララちゃんに構うのはやめてください。この子が変な言葉を覚えたらどうするんですか」
「十分変な格好してるしいいでしょ」
「ーーーーーーーってなに?」
「キララ、はしたないからやめろ」
「ほら、どうしてくれるんですか!!」
「僕の体で支払おうじゃないか」
「誰も得しないんですよ!!!」
後ろの方で後輩ちゃんと、名前の知らない野郎の言い争いがさらに発展しているのは言うまでもないだろう。ここまでうるさくなっても声が響かないのは流石にこの空間が広すぎやしないだろうか。
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