第25話 増殖するアレ

 …………え?

「それガチ?」

「ガチ」

 うーん、階段がないのかぁ。変動型だからいつか現れるのだろうな。階段が現れてこの階層からでることができるようになるまでに食料が尽きなければいいが。

 ダンジョンを壊さないといけない可能性も出てきたぞ。このダンジョンを壊せればいいが、変動型だから可能性は低いよな。

「さてどうしよう」

 一二三さんに定期的な確認を行ってもらうことと、この階層の安全の確保か。

 とりあえずモンスターを殺すか。

「キララ、このままぐるっと壁際に沿って歩いてくれ」

「りょーかい」

 右回りに進んでいくキララ。草をかき分けながら進んでいく。後輩ちゃんは僕のスマホのメモアプリを使って記録を取っている。峨々は一二三さんと話してる。

 完全に時間との勝負になったな。


 あの後から約二時間経過、ときどき殿様飛蝗と遭遇したが、キララが軽く潰していた。周囲の壁は全て見たが特に何もなく、中央の柱に向かってある程度探索したが異常な環境しか見当たらず、何もない。

 この階層には何もないのだな、と全員が思い始めた頃、一二三さんから一つの連絡が届いた。

『黒宮くん、階段がみつかったわけじゃないけど、天井に穴が空いたわよ』

 穴?上を向くが暗くて何も見えない。この中で唯一キララだけが見えたようだ。

 天井を指して大きな穴がある、と報告している。

「突然空いたのか?」

『そうね。突然ぐっ、と周りに広がっていくように穴が空いたわ。結構な大きさに広がっている感じね』

「他に何か変化は?」

『特にないわね、階段も降りてきてないし、梯子らしきものも見当たらない』

 上を向いていたキララがカット目を見開いて叫んだ。

「たくさんのむしさんがやってきた!!!」

「なんだって!?」

「一二三さん、一旦連絡切る」

『了解峨々君、がんばってね』

 暗くてよく見えないが、何かがこっちに向かってくることはわかる。峨々の安全のために真っ黒い立方体を作る。

 キララが垂直に跳び上がり、巨大なキャンディを作り出し……上に振り上げた。

 グシャ、やメキッ、という鈍い音と共に落ちてきたのは、漆黒の殻と、燃え尽きたように白い鈍器ぐらいの大きさのものだった。

 次々と、飛んでくる虫たちを撃墜するためにキララが空中でダンスを踊るように舞っている。手元には巨大なキャンディを持っているが。

 そのキララには目もくれずに、僕たちの方に飛んで来る虫達もいる。

 純黒に光る体、見るだけで生理的嫌悪を催す邪悪、全人類の敵、そうゴキブリだ。3mぐらいの巨体となり飛んでくる。

 足もムカデみたいになっているし、どれだけ気持ち悪くなれば気が済むんだ。

 空中に手をかざして、闇を捕まえる。そこからイバラ城となった闇がゴキブリたちを襲う。羽根を羽ばたかせて避けようとするが、そんなちっぽけな空中軌道じゃ僕の攻撃を避けることができない。

 体から緑色の液体を流しながら絶命していく。が、次から次へと湧いてくるゴキブリ達。

 僕の攻撃が息切れすることもないし、キララも本気を出せば72時間ほど戦い続けることができるが、絵面が気持ち悪い。




 ゴキブリを1匹見れば10匹いるって言ってたのは誰だったか。キララの方は戦いが終わっているにも関わらずまだまだゴキブリが湧いてくる。

 勘弁してくれよ。

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