第15話 報告二
会議室の報告の様子を話す前に支部長こと、
彼女はこの探索者協会の支部長なのだが、3年前ぐらいは探索者だった。別に今の探索者協会の上の人が元探索者という事例は珍しくもなんともないが、支部長の特異性は海外を探索していたという事例である。
まず探索者は団体で行動する職業だ。3〜10人を超える大人数までにもなり、非探索済みダンジョンの探索や、探索済みダンジョンの中のモンスターを処分する。海外という慣れない地域に外人の中に混じり探索する行為は、その地域の言葉が話せないとできないし、社交性も必要である。
要するに海外を探索する者自体が珍しいのだ。
そんな体験が功を奏し早い出世をしたのが僕と紗枝の目の前にいる支部長だ。
会議室にやってきた支部長に何があったのかを話す。事情聴取を終えた紗枝は支部長に帰らされた。お早い退場。
「はぁ〜〜〜〜、めんどくさい案件じゃないか。ダンジョンの前には職員の者がいたんだろ、どうしてその少女が入ってきたんだよ」
僕のことを睨んで、次にソファに寝かされている白髪の少女を一瞥する。知人の前ということもあり口が悪い。僕は支部長の探索者の頃からの知り合いである。
「わかった、報告感謝する」
「この少女はどうすればいい?やっぱりそっちが預かるか?」
「まあ空室があるからな、そこで職員が世話をしながら親を探す」
分かったと、僕が返事をしたのと同タイミング。少女が目を覚ました。支部長と目が合い、次に僕と目が合った。
瞳の色は翡翠、今の状況を理解したのかすぐに飛び起きて、突如訳のわからない言葉を喋った。
「大丈夫か」
支部長が宥めようと近づくと、距離をとる少女。次から次に聞いたことのない言語を喚く少女。一通り喋り終わったのか、口を閉ざしこちらを睨んでくる。警戒体制だ。
「なぁ、様子がおかしくないか」
「……黒宮、あいつが喋っている言語を知ってるか」
首を横にふる。聞いたことがない言語だが、なんとなく喋っているように聞こえるし、僕らの会話も相手に伝わってないように感じる。
言語が根本的に違うように感じる。
「そこの少女、名前は何だ」
支部長が問いかけるが、不思議な目を向けるだけで特に反応をしてこない。
「黒宮、お前主要な言語はある程度喋れるよな。そしてここは日本だ。いまだに自然と共に暮らす民族でもない限り、ここまで言葉が通じないということは無い」
「そりゃそうだ」
「しかしあの少女に来ている服はある程度文明が発達していないと普及していないだろ、さらに日本のダンジョンの中で見つかった」
いまだにこちらに警戒態勢を解かない少女。
「そしてだ、黒宮。ちょうどいいタイミングにお前が来たから話そうと思っていたことがある。2日前に、メガロタワーで異世界との扉が開いた」
また口を開き何かをしゃべる少女。それは何かを唱えているように聞こえる。
「メガロタワーから、見つかったダンジョンまでそう遠くはない。私は今ある状況からこの少女の出身に対する一つの仮説を考えついたんだが」
支部長の話が終わりそうな時に、少女の声も止む。
「この少女は異世界の人間では無いのか」
その言葉に反応したかはわからないが、少女の足元に幾何学的な模様が現れ、光が少女を包み込む。
支部長が床を滑るように移動し、少女の目の前に着き手をかざし、少女は倒れた。
「いや、仮説じゃあないかもしれないな。こいつは異世界人だ」
支部長は倒れた少女を抱き抱えた。
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