第14話 報告
白髪少女を抱えていると目立つので上着を着せて髪を隠してバスに乗る。バスに揺れながら30分、探索者協会に着いた。
「あら?黒宮さん。ダンジョンに行ったのでは?」
「ちょっとした問題があって帰ってきました。支部長を呼んできてください」
「…分かりました」
僕が抱えている少女に気づき怪訝な表情をしながらも連絡をとってくれた。ここで僕は紗枝を連れて状況を説明しなければならなくなり、笹目さん達とはお別れとなる。探索者協会の中にいるだろうが。
「笹目さん、バスの中で話した通りで今日の探索は、この子供がダンジョンの中にいた事を報告しなければならないので中止です」
「……分かってます。何かおかしいことが起きているんですね」
そういう笹目さんの表情は曇っている。今日の分の探索が取り消されたことに少なからず思うことがあるのだろう。突然帰ってきたことだし、状況のことを理解しても受け入れろというのは苦だろう。
「黒宮さん、支部長は5階でお待ちです」
そうこうしている内に連絡が取れたみたいだ。
「いつも仕事してる部屋ですよね、支部長がいるのって」
「そうですね、最近は静かだったがまた何かあったのかとうんざりしてましたよ」
その愚痴を僕に向けないで欲しい。紗枝を連れてエレベーターに乗り5階に向かう。
5階の突き当たりにあるそこそこ大きな扉がある部屋が目的地である【支部長室】だ。別に覚えなくていい。
紗枝に扉をノックしてもらうと、直ぐに部屋の中から返事が来た。両手が塞がっているので足で扉を蹴り開ける。鈍い音が扉から鳴ったが腕の中にいる少女は目を覚まさない。こう見ると死んでいるみたいだな。
「……なぁ黒宮。どうして蹴った?」
返答してきたのは、奥の方にある椅子に座りながら書類作業をしていた女性。
「手が塞がっていたからだな。何、僕とお前の仲だ」
「いつの間にかそのような仲になっていたか知らないが扉に傷が出来ていたら後で請求するからな」
じっとこちらを見つめて、僕の抱えている少女と横にいる紗枝のことに気づいたようだ。
「……何があった、そっちの女性はお前の客だろ。で、お前が子供を抱えている姿なんて初めて見た。さては、めんどくさい案件を持ってきたな」
結構察しがいい。
「めんどくさい案件かは知らないが、まぁダンジョン内でのことだ。ここで話していいか?」
「いや、一般人に見せられない書類もあるから向こうの会議室で報告しろ」
「了解です」
回れ右をして、会議室に向かう。隣の紗枝の視線が困惑気味、むしろ緊張しているような感じ。会議室に入り椅子に座る。少し時間を置いてやって来た。
「さて、報告してくれ」
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