第4話 みんなちがってみんないいんだもん

頭が痛い。家を出る1時間前に起きる。ああ、明日は休みだから頑張れる。


ゆで卵、ホウレンソウ、唐揚げをタッパーに詰める。冷凍させた唐揚げおにぎりと一緒に鞄の中へ放り投げた。ラップに包んだドーナツふたつも。


後輩が、ボッテガとヴァレンティノのバッグを買ったらしい。昼休憩にいつも、ルノアールでサンドウィッチとコーヒーを頼むらしい。ワンピースしか着ないらしい。基礎化粧品はエスケーツーを使っていて、毎月3万円でネイルアートをしているらしい。いつも高いヒールを履いていて、100メートル以上はタクシーに乗るらしい。もうこれ以上何も、なにも。ああ、頑張れない。



ああ、ああ、頑張りたいの。こんな女でも頑張りたいのよ。


あの子ほどおでこはつるつるじゃないし、髪はつやつやじゃないし、服はぺらぺらだけど。



あの子がおばさまに、きれいで素敵ねえって褒められて。

わたしは素敵な男性に、手際の良さがすごいですっていわれる。


いいんだもん、これでいいの。


スニーカーばかり履く女だけど、こんなことでも褒められると赤くなるの。


嬉しくなって駅から3キロ、走って帰る。














  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

芋娘日記 芋娘眠子 @immsmnmk

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ