兄妹
katsumi1979
第1話
「行ってきます・・・」
そう力が抜けた返事で僕は言った。
「いってらっしゃい! お兄ちゃん!」
僕はいつものように家を出て、学校へ行った。両親は朝早くから共働きで
家にいないのでいつも妹が見送りしている。
僕の学校は私立の中学校。電車で数十分かかるところだ。
妹は公立の中学校に行っており、僕より1つ下だ。
学校に到着すると僕の席だけ傷つけられ、机にも落書きされている・・。
学校なんか行きたくない・・・。
何が面白くて僕は学校行かなきゃいけないのか・・・。
どうしてこんな目に遭わされなければいけないのか・・・。
僕は毎日それを考えている。先生にも何度かその事を言ったことがある。
しかし、僕はあまり相手にされない・・。
いったい僕が何をしたというのだ?
「おい、金貸してくれよ」
いつものように金をせびってくるやつだ。断られると殴られる・・・。
授業が始まると、先生の目を盗み、みんなから消しゴムを投げられたり
ゴミを投げられたりの嫌がらせ攻撃が始まる。
死にたい・・・・。もう俺なんか生きている価値ないんだ。
誰も僕の味方をするやつなんていない。女子も僕を避け、まるでゴミ扱いだ。
学校が終わると下駄箱に入っている靴がナイフのようなものに
傷つけられ、ボロボロ・・・。
電車での帰り道は俺が乗る車両には同じクラスメイトの顔は見ない。
◆◆◆
家に帰るといつものように妹が出迎えてくれる。
「おにーちゃんお帰り!」
「ああ・・・ただいま・・・」
それはまるで死んだような声だった。
「おにーちゃん、あたしね料理作ってみたんだー! 食べてよ」
「うん・・・」
妹はそんな僕を気遣ってくれているのか、僕が学校でどんな生活しているのか
一切干渉してこない。僕の前では明るく振る舞っている。
「今日ねお母さんたち遅いって言ってたよ」
「そうか・・・」
「ねぇ、おにーちゃんおいしい?」
「ああ・・・」
「何か感情こもってないなー。もっと感情込めて言ってよ」
「うん、奈美の作った料理すごくおいしいよ」
「ホントに?」
「ああ、ホントだ」
奈美はとても喜んだ顔を見せた。僕も奈美のその笑顔を見て少し嫌なことも
忘れられそうだ。やがて夜も更けそろそろ寝る頃だ。
僕と奈美はそれぞれ自分の部屋に行きそのまま就寝した。
また朝になるといつものように僕は見送られ、学校へ行った。
◆◆◆
「おい、金貸してくんねーか?」
「いや・・・今日は定期以外持ってきてないんだ」
「なにぃ? てめぇわざと忘れただろ?」
「そ・・・そんなことないよ」
「じゃあなんで持ってこねぇんだよ!」
そう言われ僕は顔を殴られた。僕は目に涙を浮かばせた。
「ははは! だせー! こいつ男のくせに泣いてやんの!」
周りのみんなからも笑い声が聞こえる。
僕はもう・・・嫌だ。何もかもが・・・。
やがて学校が終わり、下校時刻になったが、やられた傷はまだ癒えなかった。
そして僕はそのまま帰宅した。
◆◆◆
ただいま・・・」
「おかえ・・・どうしたのお兄ちゃん、その傷!」
「いや、何でもない・・・」
僕は奈美の部屋に連れてかれ、救急箱を持ってきて僕を手当してくれた。
「お兄ちゃん・・・学校・・・つらい?」
僕はコクリと頷いた。
「私はいつでもお兄ちゃんの味方だよ。
だって私のたった一人のお兄ちゃんなんだもん」
そう言って奈美は僕を優しく抱いた。
「奈美ー!」
僕は奈美を強く抱きしめた。奈美はそれを拒否せず受け入れてくれた。
奈美は僕の唇にキスを交わした。そして僕は兄妹としての一線を
その日初めて越えてしまった。
「私・・・お兄ちゃんの赤ちゃん欲しいな」
奈美は笑顔でそう言った。僕も奈美と結婚出来たら良いと思った。
やがて夜が明け、僕は学校へ行った。
◆◆◆
そしていつものようにまた嫌がらせを受けた。
下校途中またあいつらに絡まれた。
「お前明日まで2万持ってこい。じゃないとぶっ殺すからな!」
そう言い残し、僕の前から去って行った。
僕は周りを見ると奈美らしき陰が見えた。きっと気のせいだろう。
昨日あんな事が起きたのだからきっと錯覚しているに違いない。
◆◆◆
ホームでは列車の放送がされた。
「あいつ持ってくるかな」
「持ってくんだろ」
そして列車が来た瞬間、いつも俺をいじめてるやつらは誰かに後ろから背中を押され突き飛ばされた。
「うわぁぁ!!」
そいつらは跳ねられ、人身事故となってしまった。
僕が駅のホームにたどり着くと人ゴミの中には奈美の姿が存在した。
帰りのラッシュと言うことで不慮の事故として処理され
結局犯人は特定されなかった。
でも僕には分かっていた。奈美がやったのだと・・・。
兄妹 katsumi1979 @katsumi2003
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