第2話 吹雪が止むまで
「えーっと……、サラ、その子大丈夫?」
倒れている人を発見した後、リヒト達は近くの洞窟に避難した。目的地は
クラーク家…つまり家なのだが、近づいてきているとはいえまだ遠い。雪が降って
いなければ周りが山や野原しかないことがわかり、そんな山の入り口付近に洞窟が
あったため、慌てて入ったのだ。最も、運んだのはサラだが。
「あー?わからん知らん。ただ、あーんな寒い中一人で倒れてたらヤバイだろー。人間なんだし、寒い中で意識を失ったり手放せば、凍死するんだから」
「んー、暖めてるけどどうかな……?洞窟だからかあまり雪も入ってこないし、洞窟の中に枯れ葉とかいっぱいあったからよかったけど……。」
といいながら、リヒトはその枯れ葉や枝が燃える焚火へ次々と枝を放り込んでいく。
サラはというと、火の粉が飛んでこず暖かい場所、というギリギリの所を選び、
倒れていたその人に毛布を被せて寝かせた後にオレンジ色の実を食べていた。
荷物を何も持たず、確かに手ぶらであった二人だが、毛布や実など、一体どうやって
用意したのだろうか。
「ま、だんだん体温が温かくなってきてるからいいんじゃね?」
「このまま風邪引いちゃったりしないかな……。」
今のうちに桶に雪でも入れようかな、と考えたリヒトは突如、
何もない所から桶を出した。
「ちょちょちょい、そんな手軽にやるなって」
「えー?でも、風邪引いたりしてたら大変だし……。」
何もない所から現れた桶を見て、サラは呆れたようにリヒトへ言った。吹雪で
たくさん桶に入ってくる雪を見ながら、リヒトはチラチラとその人を見る。
「あー、なんだっけ、こういうの。イマジネ……イリュージョン?」
「それは超能力って言うんだよ。魔法じゃなかった??」
「それそれ。見間違えられても知らないぞ」
「そんな、魔法なんてあるわけないんだから」
「ハイアンタ今世界中の子供の夢壊したーーー」
他愛もない会話をしながら、再び木を火に放り込んだり、実を食べたりする。吹雪は
刻一刻と激しくなっていく。これは明日止んでくれることを願うしかないな、と
密かに二人は思った。
「ワンチャン“奇跡”でやっちゃう?」
「奇跡はあまり起こらないから奇跡なんだよ。あとワンチャンの意味違くない?」
「じゃああまり起こらないんで起こすということでよろしくて?私の中ではワンチャンは[1回の機会]じゃなくて、[もしかしたらいけるかもしれない]っていうifの意味だよ」
「さ、左様ですか……。」
ふぇええ、暖かいわぁー。と、手を焚火に近づけて暖まり始めたサラを横目に、
リヒトはふぅ、と軽くため息をついた。
「てかさぁリヒト」
「ん?」
「そのクラーク家とやらを見つけるのは大いに良いんすけどね?その後どうするのよ。どこの国に行く気?」
首をかしげながら訝し気に聞いて来るサラに、リヒトはうーん、と唸る。
「決めてない旅ってちょっと不安しかないんすけども」
「いや、そもそも出発前も決めてなくて悩んだ末にこれなんだよ?ラビエルさんの提案なんだし……。」
自身の故郷を思い出しながら、リヒトはそう言った。
「てかココ吹雪前は草原だけで泊まるところもなかったわ…。」
「草原にはさすがに村、建てづらいのかもね」
「よーわからんわー。」
二人でははは…、と苦笑しながら会話を続ける。
「よっぽど私の故郷の文明が栄えていると見なす」
「そりゃあ世界で2番目だもん…。」
「ここじゃ照明は全部火、水も汲まなきゃだし…。」
めんどーっ!というサラの声が、洞窟に響いた。
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